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学生相談室

「相談室の窓から」~2年間の海外生活の体験から~

2016年01月15日
明治大学

『2年間の海外生活の体験から』

学生相談室 相談員
法学部准教授 廣澤 明

 

 学生の中には、留学やホームステイなど長期の海外生活を予定している者がいるだろう。私は、2年間ドイツで生活したことがあるので、その体験からいくつかのアドバイスをしたい。

 ①長期間外国で過ごすにはビザの取得が必須である。ドイツでは、ビザを取得するにはドイツの医療保険に入らなくてはならない。これが100種類以上あり、保険料も保障内容も様々で、どの保険を選んだらいいか大いに悩んだ。事前の準備が欠かせない。2年間に何回か風邪を引き医者に行ったが、これが苦労した。ドイツ語で「喉が痛い」とは言えるが、「どのくらい、どんな風に痛いか」はうまく説明できない。だから、適切な治療をしてもらえず、風邪が長引いた。そこで、日本人の医者をネットで探し、1時間電車に乗って通ったが、日本語はうまく話せるので、すぐに完治した。現地の言葉の医学用語ぐらいは知っておいた方が良い。

 ②海外生活中、私は4回スリ・置き引きにあった。電車の中で定期入れをすられたり、両替してくれと言われ財布を出したら財布の中の小銭を手づかみで持って行かれたり、集団とすれ違った際キャリーバッグの中の財布を取られたり、フードコートで食事中に2人組の置き引きにあったりした。外国にいる時は、細心の注意を払って身の回りの物を管理すべきである。

 ③日本だと、お客に対しどの店員もマニュアル通りに同じ対応をする傾向があるが、外国は違う。ドイツにいたとき、交渉をしなければならないことが多々あったが、人によって全く対応が違うので、思わぬ損をしたりした。複数の係がいて、それぞれに列ができている場合、親切そうな顔の人の列に並ぶ癖がついた。消費者の立場からは、対応がまちまちなのは困ったものであるが、角度を変えて労働者の立場に立つと、個人の裁量が大きいことは働く意欲が増すことにつながる。また、ドイツでは、有給休暇を消化することが法律で義務づけられている。人に気を遣って、なかなか有給休暇を取りづらい日本と比べると羨ましいとも思える。コンビニなどないから深夜の買い物はできないし、日曜はほとんどのお店が閉まっているから、日本人の感覚からみれば不便である。でも、どの労働者にも休暇の権利や家族の団欒が保障されているとみることもできる。外国で過ごす最大の収穫は、日本の常識にとらわれず、複眼的・相対的な思考が身に付くことだろう。皆さんも異文化体験を通して、複眼的なものの見方を習得することをお勧めする。