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アジア史専攻の代表的な授業を紹介します。 

基礎演習(アジア史)(担当:髙村 武幸 教授)

アジア史専攻 2年 在学生
 基礎演習はアジア史専攻の1年生を対象とした授業です。クラスは大まかに中国古代中世・中国近世近現代・イスラムの3つに分かれていて、自分の興味に応じてどこに入るかを選択できます。私は中国古代史に関心があるため、秦漢を専門に研究されている髙村先生の授業を受けました。入学した頃はこの専攻でどのように勉強していけば良いのか疑問に思うことがありましたが、授業を通して工具書類を利用した基礎的な中国古代史の学習方法を学び、不安を払拭することが出来ました。また、『史記』や『三国志』など白文の漢文史料を輪読することで、聞き覚えのある故事の原典に触れる喜びを感じるとともに、卒論に取り組む際に必要になる漢文読解の力をつけることが出来ました。1年生の内から専門的に自分の関心のある時代を学習することが出来るのは、明治大学アジア史専攻の大きな強みだと思いますが、基礎演習はそれを実感出来る授業の1つです。

史料演習(アジア史)(担当:高田 幸男 教授)

史料を読み解く力を養う アジア史専攻 2年 在学生
 この史料演習の授業では、主に中国近代史に関連のある文献や史料を読解することによって当時の社会・政治情勢や教育問題の理解を深めていきます。授業では近代中国の教育者であった黄炎培が執筆した『八十年来』を講読しています。これは中国語で書かれており、学生はこれを一文ずつ中国語で音読・翻訳し、その後皆で黄炎培の教育観について考察しています。ただ漠然と中国語を読むのではなく、書かれている内容を読み取る力を養うことを目標にしています。
   毎回自ら中国語を読んで翻訳することで、中国語の独特な言い回しなども学ぶことができます。さらに先生が中国留学中の興味深い話や当時の中国の状況などを詳しく話してくださるので、より中国に対する新たな見解を持つことができます。
   私はこの授業を受けて、高校世界史では習わない中国の教育システムや社会状況についてより多くの知識を深めることができたと思います。この授業で学んだことを生かして、将来は実際に中国に行って現地の様子を見学し、自らの研究に生かしていきたいです。

演習Ⅰ(アジア史)(担当:江川 ひかり 教授)

アジア史専攻 卒業生
  演習Ⅰは、いわゆる「ゼミ(ゼミナール)」です。一つの講義で100人を超える受講者がいるのも珍しくはない明治大学の授業の中で、演習Ⅰは、比較的少人数で行う貴重な授業です。ここではプレゼンテーションをしたり、文献を読んだりします。一年生から養ってきた様々な教養を土台に新たな段階へステップアップし、より専門性を高めるための授業です。指導してくださる先生方は学生それぞれの研究内容を熟知しており、親身になって相談を受けてくださいます。
    私が所属している江川ゼミには、イスラム社会や東アジア以外のアジア地域に関心をもつ学生が所属しています。西アジア、東南アジア、南アジア、中央アジアが研究の対象です。学生各自の研究は様々で、イスラム社会と奴隷との関わりや、モノからみる歴史、都市形成の歴史、パレスチナ問題、中央アジアの英雄叙事詩と歴史など自由なテーマ設定のもとに行われています。
 授業の内容はというと、自分が関心を持つ分野について研究→発表→質疑応答→先生からの講評→研究に生かすという循環型になっています。質疑応答や、講評では自分一人ではなかなか気づかなかった視点や問題点を得ることができる場になっています。また、互いの発表を聞きあうことでひらめきを得て自分の研究の参考にすることができます。そのため学び合いの機会という側面ももっています。
    多くのゼミ生がトルコ語、アラビア語、ペルシア語を学んで研究に生かしたり、興味あるシンポジウムや講演会に参加したり、海外へ旅行したりと積極的に行動しています。お互いに刺激を受け合いながら、前へと進んでいけるのがこの「演習Ⅰ」の醍醐味だと思います。

文献講読(アジア史)(担当:櫻井 智美 教授)

アジア史専攻 卒業生
 「文献講読(アジア史)」では、1年の「基礎演習」、2年の「史料演習」で身に付けた知識・史料の活用法などを用い、卒業論文での史料の活用を想定しつつ、より深く漢籍を読み込んでいきます。櫻井ゼミでは、初回の講義で『黒韃事略箋証』をテキストに選定しました。この史料は、拡大するモンゴル帝国の政治・モンゴル高原の風土・遊牧民の生活習慣などを南宋の漢人の目線から記録したものです。
   授業は、いわゆる一斉授業でなく、先生も交えての話し合いのスタイルを採ります。具体的には、①史料の中国語読みや漢文読み下し用語の出典などを調べる予習、②実際に授業で現代日本語訳して読みあげること、そして、③その内容について全員で考察する討論という三段階に分かれていて、特に最後の討論が重要となります。意見を出し合うことで、自身は勿論のこと、教室全体の学びとして知識・経験を共有します。
 卒論を視野に入れ、答えを一つに絞りづらい学問領域をも扱うため、戸惑うこともあるかもしれませんが、たとえ滞っても先生や他の学生がフォローしてくれるので臆する必要はありません。逆に、学生の意見から思いがけない解釈が生まれるなど、意外性と面白さに満ちた授業です。
担当教員からのコメント
 授業では同じ史料を読んでも、幾通りもの解釈が披露されます。完全な読み間違いもありますが、漢字一文字一文字の意味を大切に調べている皆さんの解釈の中には、通説とは違うけれども議論の可能性がある理解の仕方が提示されることも多くあります。これらについて議論する過程こそが、歴史研究の醍醐味と言えるでしょう。100分はあっという間に過ぎてしまいます。今後、関連する中国語や英語の資料をもっと活用していきたいと考えています。

イスラム史(担当:江川 ひかり 教授)

アジア史学専攻 2年 在学生
 この授業は名前こそ「イスラム史」ですが、内容は宗教共同体としてのイスラムの成立からオスマン帝国までのイスラム諸王朝の歴史とイスラムの法学や哲学、文化を広く学ぶのでイスラムという宗教のなかにある考え方の多様性を知ることができます。授業では先生が準備してくれた映像や写真も見せてくれるので、イスラムをこれから初めて知る人にも分かりやすく興味がわくようになっています。また西アジアから中央ユーラシアの歴史やユダヤ教,キリスト教との関係に関心のある方にも興味深い内容です。
 日本においてもかつては否定的なイメージが先行していたイスラムですが、近年は少しずつムスリムの文化に触れてイスラムに興味を持つ人も増えてきました。日本を含めた世界中で留学生や移民や難民として接する機会が増えているムスリムに対してその価値観を自分の価値観とは違うものとして理解する上でもその歴史や文化を学ぶことは役に立ちます。
 例えば、同じスンナ派であっても「4大法学派」はそれぞれ戒律への解釈は異なりますし、「スーフィー」と呼ばれる神秘主義者たちはイスラムの戒律よりもの内面の修行に熱心で広く民衆に親しまれ、美しい詩や音楽や踊りを作りました。これだけでもイスラムが歴史の中で多様に発展してきたことがうかがえます。
 この授業では、イスラムの立場からの歴史や文化を学ぶことでイスラム世界の多様性や豊さを知り、現在イスラムを取り巻いている出来事についてなぜそうなっているのかを自分で考え、世間に流布しているイスラムに対する誤解や偏見に基づいた言説を批判的に視ることができるようになります。

東アジア国際関係史(担当:櫻井 智美 教授)

アジア史専攻 4年 在学生
   この授業は、日中交流を文化、学問、交易、芸術など様々な場面で日本と中国両方の視点から検証していく講義形式です。私はここで10世紀以降、遣唐使廃止後の僧侶や商人たちの動向を中心に日本に与えた文化的な影響や貿易事情を学びました。人物、地理、物品という個々の対象を取り出して最新の研究成果を織り交ぜながら解説されるので、授業後には当時の豊かな国際関係の様子をイメージすることが出来て、概論とは違った一つのテーマ性を実感できました。世界史で習った「遣唐使」や「元寇」という言葉は単独で存在するのではなく、その背景となった当時の世界観に鑑みたものだと思いました。 
担当教員からのコメント
 「東アジア国際関係史」は、3、4年生を対象とする授業で、少し専門的な内容を詳しく学んでいきます。
 「国際関係」の講義といえば、近現代の戦争を中心とする各国の関係を扱う授業を想像される方が多いでしょう。しかし、東アジアには、政治を中心的に国際関係が論じられる近現代以前にも、各国の人々が経済や文化レベルで交流しあう、悠久の歴史が横たわっています。私の授業では、遣唐使以後の日中関係を中心に、東アジアの人々の交流について講義しました。現代のわれわれの国際交流も、近現代の国際関係も、長い交流の歴史の上に作られたことを実感できればと考えています。