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広原湿原および周辺遺跡に関する考古・古環境調査

広原湿原および周辺遺跡に関する考古・古環境調査

▲広原湿原(長野県小県郡長和町)

広原(ひろっぱら)湿原は黒曜石原産地である和田峠の北方約1.5km,標高1400mに位置しています。旧和田村教育委員会による分布調査の結果,広原湿原付近にはいくつかの遺跡が分布することが知られていました。黒耀石研究センターは,2011年度から広原湿原と周辺遺跡に関する考古・古環境調査を実施しています。調査は,私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「ヒト−資源環境系の歴史的変遷に基づく先史時代人類誌の構築」(研究代表者:小野昭)によって行われています。
私たちの調査は、「中部高地黒曜石原産地一帯の古環境はどのように変遷し,先史時代の人類はどのように適応していったのか?」という問いかけをめぐって展開されます。
第一に、湿原周辺に残された遺跡を発掘し、旧石器時代から縄文時代にかけての人々が,湿原周辺の黒曜石原産地をどのように開発・利用したのかを探り、中部高地の黒曜石原産地の一帯にある,旧石器時代から縄文時代にかけての黒曜石を獲得するための人類活動の痕跡と関係づけます。次に、この地方における古環境復元のための調査を行います。当該地方は、山間地であるという事情から、八島ヶ原湿原など湿地でのボーリング調査が例外的に行われただけでしたし、旧石器時代人が原産地で活発に活動していた最終氷期の様相はほとんど何も知られていないのが実情でした。こうした現状を打開するために、私たちの調査は、広原湿原の泥炭層と周辺遺跡の土層堆積から古環境分析サンプルを採取して,氷河期の森林限界とされる標高1500m付近における更新世から完新世初頭の古環境の様相を解明します。

▲「長野県長和町広原湿原および周辺遺跡における考古・古環境調査(2011年度)」 橋詰 潤・島田和高・工藤雄一郎・佐瀬 隆・早田 勉・細野 衛・公文富士夫(2012)『日本考古学協会第78回総会研究発表要旨』pp.156-157、日本考古学協会、東京

▲広原湿原調査地の状況

▲広原遺跡黒曜石出土状況

▲広原遺跡土層サンプル採取用トレンチ

▲長野県長和町広原湿原の2011年度調査地点、和田村教育委員会編1993=和田村教育委員会編1993『長野県黒耀石原産地遺跡分布調査報告書(和田峠・男女倉谷)III』241p.、和田村教育委員会、和田村より作成。