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本棚 「中野京子と読み解く名画の謎ギリシャ神話篇」 中野 京子 著(文藝春秋、1524円)



ハプスブルグ家、ブルボン家を名画から切れ味よい語り口で読み解いてきた中野京子氏が、今度はギリシャ神話をとりあげた。絵画を楽しむためのみならず、神話について学んでみたいと思った人にとっても珠玉の一冊といえよう。

本書を読み進めると、日本人にはさほどなじみのないギリシャ神話が神々の物語というよりも、時には残酷であっても、非常に官能的で人間味あふれた物語だとわかる。多くの女神や人間の女性に興味を抱いて激しくアプローチする全能の神ゼウスの肉食男子のような側面、また愛の女神ヴィーナスが実は浮気性で、彼女によって翻弄される神々や人々の物語の面白さが特に際立つ。ゼウスのDNAを受け継いだ双子の姉弟である処女神ディアナの激しい感情やアポロンの男女を問わない恋愛模様もまた見どころである。

数々の名画と中野氏のウィットに富んだ文章を介して、感情をあらわにする神々の姿を知ることができ、神々も我々と非常に近い存在であること、むしろ我々の仲間であると感じさせる一冊である。

大須賀寿子・理工学部講師(著者は理工学部講師)