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本棚 「俳句縦横無尽」 夏石 番矢(乾 昌幸)ほか 著(沖積舎、2,500円)



夏石番矢・鎌倉佐弓共著の『俳句縦横無尽』は、夫婦でもある二人の著者が、高知新聞に連載したエッセイをまとめた本だ。俳句を作りだした頃の悪戦苦闘や、フランスでの生活や、病気との闘いや、世界を駆け巡っての俳句の交流活動などが、それこそ「縦横無尽」に綴られている。

この二人は、俳句の作風に関してはかなり異なるようだ。鎌倉氏の作品が俳句の定型を守りながら独自の世界を創りだすのに対し(「ポストまで歩けば二分走れば春」)、夏石氏の作品は5・7・5や季語などの約束事をときには壊すことを恐れない(「子供とキリンにだけ見えている空飛ぶ法王」)。本書の前半では、二人がそれぞれの作風を探り当てるまでの過程が回想されていて、たいへん興味深い。

その一方で、著者たちは、俳句を愛する世界の人々のために俳句を多言語で発信する活動を長年行ってきた。本書の後半では、日本や海外の作品を多様な言語に翻訳する苦労や、俳句や詩の国際大会を巡る喜びが語られている。俳句の未来を感じさせる一冊だ。

斎藤英治・法学部教授(著者は法学部教授)