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明治大学黒川農場完成予想図 (CGによる完成イメージ。色や形等、竣工時とは異なる場合があります)

開発面積 約128,000㎡
建築面積 約7,100㎡
延床面積 約8,900㎡
全体工期 2010年4月~2012年3月(備品搬入等を含む)
コンセプト 未来型エコシステム(環境共生)・里山共生システム(自然共生)・地域連携システム(地域共生)の3つをコンセプトに、未来型アグリ・エコファームを目指す。

座談 黒川農場への期待とその役割

持続可能な資源循環型の社会への転換が求められる中にあって、環境と共生できる農業の果たす役割、先端技術の研究など黒川農場について福宮賢一・社会連携機構長進行の座談を一部抜粋して掲載する。

※ 全文バージョンは現在、鋭意製作中です。

福宮
さっそく、環境共生、自然共生、地域共生という3つのコンセプトについて、それぞれ工夫なさったところをお教えください。

早田
環境共生においては、自然エネルギーを積極的に使うということです。化石燃料から自然エネルギーへ。いま我が国の重要な課題になっていますが、バイオマスの資源循環です。雑木林の整備で出てくる間伐材や、枝打ちで出てくる枝など、そういったものを廃棄するのではなく資源として使う。その1つとして、ペレットに変えて、温室のペレットボイラー燃料として使う。あるいはチップに加工して、いわゆる堆肥をつくる。間伐とか雑木林の整備で出てくるバイオマスを、従来は廃棄物として扱っていたのですけれど、それを資源として使っていく。バイオマスというのは再生するエネルギーなので、植林等もうまくやりながら持続可能な自然エネルギーを利用することがまず中心にあります。そのほかに太陽光の発電や、雨水はそのまま流すのではなくて、農作物の旱水用に再利用することが盛り込まれております。これが環境との共生ということです。

福宮
自然共生、里山共生のほうも。

早田
これは自然循環といいますか、持続可能な社会づくりという意味において、里山をうまく活用したい。かつて日本の国がそうであったように、薪や炭を燃料として使ったり、落ち葉を肥料として使ったり、さらにはそこから出てくるキノコ・山菜といったものは食料として使う。そういう持続可能な社会ができていたわけです。それをこの農場で再現しようと。これを通じて学生や一般市民や子どもたちへ向けて、環境教育や、生物の多様性等の教育をしっかりしていこうというのが、1つの狙いになっています。自然との共生という意味においては里山との共生、里山をつくっていく。その過程において間伐材などが出てきます。それを扱いやすいペレットに変え、資源として利用します。

福宮
里山共生の仕組みの中に、周辺の市民やお子さんたちが参加しますね。外との関係を中に取り込みながら、自然共生と里山共生というものを織り込んでいく。なかなか魅力的なものだと思います。地域共生については、いかがでしょうか。

早田
この中核はリバティアカデミーで、市民の農園型農業講座、いわゆる市民菜園をやりながら、しっかりとした耕作物の勉強と、栽培技術を勉強できる市民講座を設けます。初心者向け・中級者向け・上級者向けとカテゴリー分けをし、初心者はとにかく農業に親しんでもらう。上級者向けには、指導者養成レベルの教育をしたいと考えています。その中には農業技術や、里山の環境教育など、いろいろなコースを設けたいと思っています。

福宮
農学部としてお使いになる上では、どういう点に期待しておられるのでしょうか。

早瀬
農学というのは、一言で言えば〝人間の永続性を追求する学問〟です。いまお話のあった3つのコンセプトが備わった農場ですので、そういったものに基づいた研究・教育ができるのではないかと思います。教育の面では、やはり農場実習が中心になりますけれども、学生がいろいろなパターンの農場実習を行うことができます。研究の面でも最先端の農学の研究がここで展開されることが期待されます。それから世界にメッセージを発信しようという思いも最終的にはありますので、国際交流などもこれからは非常に重要な問題になってくると思います。

福宮
農学部として地域の方と何か連携をなさるようなプランはおありになるのでしょうか。

早瀬
例えば里山の問題でも、地域の方々の力もお借りしないと里山をしっかりと保全していくことはできません。それから、いろいろな農産物を生産しますから、それを売っていかないといけない。そのことに関しても、やはり地域の方々の協力がないとできないと思っています。

早田
黒川農場は生産農場としても位置づけられておりますので、相当の農産物が生産されます。その効率的な販売方法などについては、究極的には学生たちのベンチャービジネスの学習の場として、例えば商学部にうってつけだと思います。農業技術は別に置いても、基本コンセプトにある資源循環型の地域づくりや、環境教育などは、農学部以外の学生でも十分に入ってこれる。その辺も期待しております。

福宮
黒川農場の生産物のブランド化を考えるというのは、なかなか意義のあることですし、やりがいのあるお話です。社会連携としてもお手伝いをさせていただきたいと思っております。3つのキーコンセプトの中でこれから新展開をはかってくださるお2人の先生方に、それぞれ今後の抱負を最後にお聞かせいただければと思います。

早田
黒川農場はいろんな意味で挑戦的な農場だと思っています。全国に類のない農場になりますし、ここに込めました3つのコンセプトはぜひ実現させて、学生や市民、子どもたちに21世紀の人類の進むべき道、方向性を目に見える形で、この農場で展開できたら、明治大学にとっても大きな宝となります。明治大学だけではなくて日本社会の、ひいては国際的にも非常に意味のある農場になると思います。

早瀬
世界に発信する拠点として、まさにいまの明治大学のスローガンであります「世界へ」に向けて、その一翼を担えればと思っております。これは農学部だけでは到底できませんので、いろいろな学部のご協力、あるいは地域の方々のご協力や、国際的にも海外の方のご協力などを仰いで、それを目指していきたいと思っております。

福宮
素晴らしい夢のある農場になりますね。さらに先生方のご尽力で素晴らしい発展につなげてください。本日は、ありがとうございました。(了)