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大躍進の基礎は学園の正常化 副学長(学務担当兼学生部長) 松橋 公治

父母会などで地方に出かけた際に、40~50代の校友の方に「キャンパスは、相変わらず自治会に牛耳られているのですか」と尋ねられることがあります。結論を先取りして言えば、そんな不健全な状態は「今や昔の話」です。

不幸な時代

確かに不幸にして、2000年以前の20年余にわたり、本学の学生自治会は、新左翼の政治セクト、革労協により「指導」された、ごく少数の学生活動家によって(同じくブント系の活動家と連携して)支配されていました。

不健全な学内状況の下で、次のようなことが日常的に生じていました。大学によって代理徴収された毎年の自治会費のうち、約半分に当たる額(約3000万円)が学生会・学苑会中執などの「自治組織」に流れていました。

この「自治組織」は、サークルの部室(ボックス)を含む学生会館の管理運営の「実権」を掌握し、ボックスの分配権を利用して、学生諸君を牛耳っていました。さらに、学館に宿泊して、学館を私物化していました。その象徴が、バリケードによって要塞化され、いわゆる「外人部隊」が泊まり込んで常時生活していた生田学生会館(部室センター)でした。

学園祭も、学生会・学苑会中執にとっては、大学からの補助金など資金調達(象徴は「賛助金」という名の参加費=「ショバ代」の徴収)の場であり、政治セクトとしてのプレゼンスを内外に誇示することが、実質的な目的となっていました。

立ち上がった教職員 自主改革に向かう学生諸君

こうした不健全な状況を是正するために、本学は2001年、根源である学生自治会の公認を停止しました。同時に、学内に「常住していた外人部隊」を学外に排除し、さらに革労協活動家が実権を握っていた明治大学生協に対する便宜供与を全面的に見直しました。本学教職員が一丸となって実施した一連の措置を通じて、自治会に牛耳られていたキャンパスは、まさに「今や昔の話」となりました。

学園祭も、生田祭に代わる「生明祭」(2001年)が、和泉祭に代わる「明大祭」(2002年)が、それぞれ新生学園祭として再出発しました。学生諸君が自主的に組織した実行委員会を大学が全面的に支援して開催する学園祭のモデルが、自治会の公認停止から1年余の間に次々と創られました。実行委員は毎年200名以上の学生によって組織され、自主的にノンアルコールを決定し、環境にやさしい学園祭を目指しています。かつての「ショバ代」徴収や政治セクトのプレゼンスもなくなり、学生たちは伸び伸び、活き活きと、思い思いの企画と学園祭成功のために動き回っています。新生学園祭は今や、高校生やその保護者も多く来場し、第二のオープンキャンパスと見間違えるほどです。むしろ残念なことは、かつての「思い出」からか、駆けつける校友が少ないことです。是非とも今年は、学園祭にお出かけ下さい。我田引水ではありませんが、この学園生活の正常化が、その後の本学大躍進の基礎にあったことだけは間違いありません。

新たな学生支援の展開

学園が正常化される中で、かつて「自治会対策室」と化していた学生部も、大きな変身を求められました。念のために申し添えますが、本学の学生部は「自治会対策室」時代にあっても、学生健保・保険、セミナーハウスなどの厚生施設、奨学金など学生生活全般に関わる施策では、私立大学の中でトップ集団、先進的な存在であったことです。

とはいえ、「自治会」との対置が「目の上のたんこぶ」となって、既に私立大学では標準化していた「正課外活動から正課外教育へ」の質的転換を促進する各種支援が不十分であったことも事実です。なかでも、正課外教育の観点からの体育会を含めた課外活動の見直しと支援や、学生の自立や「社会人基礎力」における「見えない学力」を育成するための支援はほとんど手つかずの状態でした。

手始めに、サークル活動では、かつて病巣であった文連や研連を廃止するとともに、大学による直接支援に改めました。体育会も、まだまだOB・OGに依存する面がありますが、正課外教育の観点から大学が直接支援する方式に改革されています。

さらに、最も遅れていた「普通の」学生たちに対する自立と「社会人基礎力」育成のための支援にも動き出しました。これが2005年からスタートした「M-Naviプログラム」(Meiji Navigation Program)で、社会的な要請と学生のニーズに対応するための正課外教育プログラムです。2007年度からは、文科省による学生支援GP(2007-10年)に採択されました。そこでは、教養型(聴講型)に加えて、体験型や参加型という今日的な期待に対応すべく、冒険的な企画を開発するなど、多様な機会・契機を提供しています。リバティタワーを訪れた校友の中には、プログラムへの参加を呼びかけるユニークなポスターを見かけた方も少なくないと思われます。

学生支援の課題

学内の正常化以降、厚生施設や奨学金など従来型の学生生活支援はますます充実し、加えて新たな試みが始まっています。とはいえ、課題も少なくありません。なによりも、学生が学園生活をエンジョイするとともに、課外活動の拠点となる3キャンパスの学生会館が、既に築40年以上を経過して狭隘な上に、十分に機能を果たしていません。特に、駿河台は深刻です。学生部では、学園生活をエンジョイするための「ゆとりスペース」の確保と機能の充実したスチューデントセンターの建設を推進しています。

課外活動では、理科連や体育会、体同連を除いて、学生たち自身が中間的なとりまとめをし、自主的に管理する組織を有していません。理科連・体育会本部を模した中間組織を再生して、大学と連携していくことが重要です。

また、ボランティア活動をはじめとする、従来の枠には収まりきらない学生たちの自主的な活動が増えています。これの活性化も課題です。学生部では、2008年からボランティアセンターを立ち上げて、そうした動きを積極的に支援しています。