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本棚 「現代イギリスの社会と文化」 宇野毅 著 (彩流社、2,500円)



本書は著者によって、正に書かれるべき本であり、著者を知る者にとっては、待ちに待った一冊である。その原点は1977年、まだ学生だった著者の最初のイギリス滞在である。それは著者にとって「忘れ難いイギリスへの初恋」であり、その傾斜は3年後、典型的イギリス人スティーヴン氏夫妻との出会いによって、裏付けられていく。

第1章イギリスにふれる(4つの国・1つの国家、王室問題など)第2章イギリス生活ことはじめ(この章は50ページ以上に及ぶ正確かつ詳細な生活事情が書かれていて実に有益)第3章イギリスを楽しむ(ほんもののゆとり)更に第4章イギリスに学ぶ、第5章イギリスを考える、この章あたりにくると記述は豊富な資料に基づく文化論的色彩を帯びてくる。本書はまさにイギリスについての溢れんばかりの情報の蓄積である。いや情報というよりはそれを超えた文化論的知識に満ちている。そのために費やされた時間、労力、資力がどれほど大きかったかを推察することができるが、その「です調」の語り口はそうしたことを感じさせない魅力をももっている。

長岩寛・名誉教授

(著者は経営学部教授)