本書の著者エルフリーデ・イェリネクはオーストリアの女性作家。2004年にはノーベル文学賞を受賞した。翻訳にして700ページ超のこの大作は、彼女の創作活動のテーマがすべて盛り込まれた、イェリネクの自他共に認める代表作である。
小説の舞台はオーストリア、シュタイアーマルク州。自然の美しい、ウインタースポーツでも有名な土地である。その地のペンション「アルペンローゼ」に3 人の「死者」があらわれる。彼らはゾンビのように何度も死んでは生き返りながら、人間の欲望をむき出しに物語を繰り広げる。
オーストリアにおける「死者」とはイェリネクにとって「ナチス時代の犠牲者たち」にほかならない。オーストリア人の多くは自国を「ナチスに最初に襲われ た国」であるとし、ナチス時代の犯罪は自分たちには関係ないと思ってきた。イェリネクはこの小説で、芸術と自然とスポーツの観光国オーストリアを、無比の 言葉遊び、メタファー、引用を駆使しながらパロディー化し、その欺瞞を糾すのである。
宗宮朋子・法学部兼任講師
(訳者は法学部教授)
小説の舞台はオーストリア、シュタイアーマルク州。自然の美しい、ウインタースポーツでも有名な土地である。その地のペンション「アルペンローゼ」に3 人の「死者」があらわれる。彼らはゾンビのように何度も死んでは生き返りながら、人間の欲望をむき出しに物語を繰り広げる。
オーストリアにおける「死者」とはイェリネクにとって「ナチス時代の犠牲者たち」にほかならない。オーストリア人の多くは自国を「ナチスに最初に襲われ た国」であるとし、ナチス時代の犯罪は自分たちには関係ないと思ってきた。イェリネクはこの小説で、芸術と自然とスポーツの観光国オーストリアを、無比の 言葉遊び、メタファー、引用を駆使しながらパロディー化し、その欺瞞を糾すのである。
宗宮朋子・法学部兼任講師
(訳者は法学部教授)