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本棚 「新史料からみる中国現代史」 口述・電子化・地方文献 高田幸男 編著 (東方書店、3,800円)



あまり知られていないと思われるが、実は中国では、学術情報のデジタル化が急速に進展している。現在では重 要な資料・論考のほとんどを、デジタル情報として入手できる。さらに、それに並行して、今まではアクセスできなかった多様な情報が一般公開されている。と くに、地方の現場へのフィールドワークや、地方史料の閲覧が可能になることで、今まで声が聞こえなかった一般民衆の姿を捉えることが、一定程度可能になっ た。従来の中国観は、ややもすると中央の動向ばかりに着目しがちであったが、デジタル化と地方の現場へのアクセスにより、より多層的で、現実に近い中国像 を手に入れるチャンスが到来している。

とはいえ、ほとんどの外国人研究者は、膨大な史料を前にして、呆然と立ちすくむのが現実であろう。こうした現状を前にして、編著者の高田氏は、研究グ ループを組織し、主体的に史料の大海原に分け入って、見取り図を提起してくれた。本書は、新しい中国像に接近するための、重要な手がかりである。

鈴木将久・政治経済学部教授

(編者は文学部教授)