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黒耀石研究センター  黒曜石をめぐる 国際ワークショップ開催

長和町教育委員会が進める縄文時代の 黒曜石鉱山跡の発掘現場 閉会セレモニーで、北海道白滝あじさいの 滝露頭から共同で採取した黒曜石を割った 黒曜石試料の共有化と標準化のため 国際的な研究ネットワークを構築

明治大学黒耀石研究センターは11月4日から6日まで、長野県長和町にある同センターを会場に黒曜石に関する国際ワークショップ「黒曜石の産地推定をめぐる方法論上の問題と試料の標準化をめぐって」を開催した。

これは2011年度からスタートした大型研究「ヒト—資源環境系の歴史的変遷に基づく先史時代人類誌の構築」(研究代表者:小野昭)の取り組みの一環で、全体は明治大学黒耀石研究センターと東京大学の佐藤宏之教授(考古学)の科研プロジェクトとの共催となる。北海道白滝の黒曜石原産地の野外調査は東大のプロジェクトが中心であり、研究センターでのワークショップは明治大学が中心となって実施した。

近年、日本だけでなく、北米、ロシア極東地方、韓国で黒曜石の研究が考古学との関係で盛んとなり、九州の黒曜石が韓国の旧石器時代の遺跡から発見されたことや、北海道の黒曜石がロシアのアムール川の下流の遺跡から発見されるなど、海を超えての発見が相次いだ。

こうした状況は、今後の展開における試料の扱いの混乱を防ぐために、各国の研究者に国際的な研究ネットワークの構築と黒曜石試料の共有化、標準化の必要性を強く認識させた。

今回は、北米ミズリー大学原子炉実験所(M・グラスコック、J・ファーガソン)、ロシア極東地質学研究所(V・ポポフ、A・グレベニコフ)、ロシアノボシビルスク地質学鉱物学研究所(Y・クズミン)、韓国ソウル大学年代測定研究所(J・C・キム)、日本からは、明治大学、東京大学、北海道教育大学旭川分校、各種博物館、民間の分析会社の若手など、黒曜石の研究者約30人が参加し、形式にこだわらない実質的な議論をおこなった。

初日は長和町教育委員会が進める縄文時代の黒曜石鉱山跡の発掘現場の見学、同黒曜石体験ミュージアムの見学をし、最後は明治大学のセンターの分析ラボのツアーと考古資料施設の見学をした。

2日目は合計11本の研究報告があり、本学のセンター員関係者では隅田祥光・研究知財特別嘱託、金成太郎・文学部特別嘱託、池谷信之・沼津市文化財センター員がそれぞれ報告を行った。

最終日は私が座長として具体的な行動提起を行い、最後に北海道白滝あじさいの滝露頭から共同で採取した黒曜石の塊をハンマーで割るセレモニーを行い、各国・各分析室に持ち帰り分析の結果を明治大学黒耀石研究センターでとりまとめることを約束して閉会した。基礎的で地味な専門家会議であったが、国際的に考古学、分析化学、地質学のエキスパートが一堂に会し、懸案の課題を解決するための貴重な第一歩を踏み出した。

また、ロシアとの交流は困難を伴うことが多いが、本年度、黒耀石研究センターとロシア科学アカデミー極東支部極東地質学研究所との間で研究交流に関する合意文書を取り交わすことができた。今回のワークショップで同地質学研究所から2人の研究者を招聘するにあたり、大きな意味をもったことを強調しておきたい。

(小野昭・黒耀石研究センター長)