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創立130周年記念事業 国際シンポジウム 「世界の文化、芸術・科学から見たURUSHI」を盛大に開催

土屋理事(左)から神谷博士に賞状を贈呈 博物館での特別展示

明治大学は国際シンポジウム「世界の文化、芸術・科学から見たURUSHI-文化交流の歴史によって生み出された漆の絆を残すために、何ができるのか」を1月14日、駿河台キャンパス・リバティタワーで開催した。また、同シンポジウムを含む1月13日~15日の3日間「漆サミット2012」が紫紺館で、1月12日~15日の4日間「特別展示」が博物館で開催された。

同シンポジウムに先立ち、約240人が参加し満員となった会場では、若き研究者の奨励を目的とする「創立130周年記念懸賞論文(学際領域分野)」の表彰が行われ、神谷嘉美博士(地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター研究員)「アジアの漆文化と漆工技術の保存科学的意義」に土屋恵一郎教務担当常勤理事より最優秀賞が贈呈された。

3部構成で行われたシンポジウム、第一部は人間国宝の室瀬和美氏(重要無形文化財保持者「蒔絵」)が「URUSHIの価値」と題して基調講演を行った。室瀬氏は昨年3月に発生した未曾有の大震災をきっかけに、音楽や美術といった分野そのものが人々に与える影響力を語り、「未来の人々に伝えるための文化財の代表として『漆』は重要なものだ」と提唱した。その上で、漆樹の樹液である“漆”の英語訳について、あらゆる塗料を意味する“Lacquer”ではなく、“URUSHI”という言葉によって伝えていくことが必要ではないかと訴えた。

第二部は世界的な漆の研究家3人がそれぞれのテーマで講演した。(1)「The Art of Russian Lacquer and Its Techniques」モニカ・コプリン博士(ドイツ・ミュンスター漆工芸博物館長)、(2)「Museum and archeological Asian lacquerware: origin, technical studies and alteration」アンソレン・レ・ホ博士(フランス・ルーブル美術館保存科学室)、(3)「漆器の科学分析と応用」宮腰哲雄教授(理工学部)。

(1)モニカ館長は、漆器を源流としながらも、天然の漆やべっ甲などを用いないでつくられる様々なコレクションを美しい画像で紹介しながら、どのような歴史的背景から派生したのか、そのつくり方はどのようなものであったかを詳しく解説した。

(2)アンソレン博士は、学芸員や修復家・科学者が直面する問題について触れた。それは、漆樹の育成しないヨーロッパで17~18世紀に発展してきた模造漆器(西洋にある樹脂やオイルを様々に配合し、漆によく似た塗料で編み出された漆器のような品物)によって生み出された多くの品物や、アジアから輸入された天然の漆液を使った漆器などを保存・修復していく段階で発生する問題である。そして所蔵品の科学分析事例を紹介しながら、科学的な手法によってどのような材料が使われているかを評価できると指摘した。更に、さまざまな立場の人間が関わり合いながら作品を検証していく重要性を訴えた。

(3)宮腰教授は、漆種の判別の問題や琉球王国で用いられていた漆液、京都で出土したタイ産漆の話題など、これまでの科学分析の事例に触れながら、新しい事実の発見や問題解決の糸口を掴み始めたことを紹介した。

第三部では、「漆を未来へつなげるために」をテーマに講演者全員が登壇し、神谷研究員をコーディネータとしてパネルディスカッションを行った。天然の漆と合成の塗料などの名称についての疑問や提案、それぞれの国での漆のイメージなどについてコメントがなされた。そして文化交流の証でもある漆を未来へ残し、伝えていくことは、あらゆる角度からの検証が重要であること、どの情報も欠けることのないよう一体的な活動が必要だとの結論を得た。漆に関する多様な視点での協力体制を築くことが今後は非常に必要であり、それがまた漆分野に新しい世界を提示する可能性が大いに期待できること、未来に繋げていかなければいけないことを語り合った。

閉会にあたり、あいさつに立った坂本恒夫副学長(研究担当)は、「漆は芸術からみても科学的にみても素晴らしい夢のある存在である」と語り、「明治大学はこれからも世界へ向かって発信する」と創立130周年記念事業を機に、明治大学を世界的な研究拠点として発展させていく決意を表した。

漆サミット2012

「漆サミット2012」は1月13日~15日の3日間、「資源、歴史・文化、科学」をテーマに、駿河台キャンパス紫紺館で、漆サミット実行委員会(委員長=宮腰哲雄)・二戸市の共催で3年連続3回目の開催となった。今回のサミットでは、国内・外の研究者らを招聘し、最新の研究動向や国際的な広がりについて講演を中心に行われ、ポスターセッションも実施された。漆サミットは、ウルシ原木の資源確保・資源利用、後継者の確保、漆文化の継承など、漆に関する様々な課題を積極的に普及宣伝し、問題解決に向けた環境を整えていくことを目的としている。