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本棚 『ウエスタン・インパクト~近代社会経済思想の比較史~』金子光男 編著 (東京堂出版、5500円)



本書は、明治期から第二次世界大戦の頃までに、わが国が西欧から受けたさまざまな衝撃とそれへの対応を経済史と思想史の観点から検討したものである。前者では都市貧民(街)、鉄道忌避、煙害などの問題が、後者ではG.V.アペール(お雇い外国人)の経済学、福田徳三のゾンバルト受容、両大戦間の戦争経済論などについて論じられている。

日本の近代化に関する研究は、その性格規定をめぐって長い間論争が続き、多くの歴史的事実が解明されてきた。一般向けに書かれた日本の歴史や高校の日本史教科書もこの成果を取り入れている。これらは政治的・経済的な衝撃や資本主義導入にともなって発生した社会問題などの実態を記しているが、本書で論じられているような社会問題の解決や資本主義の育成のための経済学導入などを西欧から学んでいた人びとのことは殆んど触れていない。

共同研究の論集は関心ある論文に注目しがちであるが、編者による懇切な各論文の紹介が「はしがき」にあるので、収録された論文を読みやすくしている。

藤田昭造・明治中学校教諭、文学部兼任講師(著者は政治経済学部教授)