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論壇 ソフトパワーのトップスクールを目指せ! 教務担当常勤理事 飯田 和人

明治大学は「個を強くする大学」としてトップスクールを目指している。トップスクールとは、教育・研究のみならず卒業生の活躍先を含めてトップという意味である。問題は、明治大学の歴史を踏まえてどのような形でこれを確立して行くのかにある。

本学は主として文系大学として発展してきた歴史があり、ひとまずは、そうした歴史的経緯や独自性を基礎にこの可能性を展望してみよう。

文系は「政治、経済、社会、文化」という四領域に分かれる。また、これらはある種のパワー概念として捉え、関係づけることも可能である。つまり、この四領域の両端に配された「政治」と「文化」のうち、前者に向かうほどハードパワーの圏域に入り、後者に接近するにつれてソフトパワーの圏域に入るという関係である。

では、このうち、今後わが国が世界に対してリーダーシップを発揮できそうな領域はどこだろうか? 残念ながら、それが政治でないことは確かであり、経済もGDPを基準にすれば人口減少段階に入った日本が新興諸国に次々と抜き去られることは時間の問題である。ただ社会については安定性や公的インフラ等を基準にすればトップクラスであり、これを基盤とした文化についても日本はこれからの世界に大きな影響を与えうる潜在力をもっている。

このような「政治、経済、社会、文化」という四つの領域のうち、本学がトップスクールとしての歴史的基盤を現に持っているのは、芸能、スポーツ等も含む「文化」領域であることは誰しも異論のないところであろう。そこで、本学はまず「文化」領域でトップスクールとしての評価を確立して行くべきである。この領域でトップスクールを目指すということは、いわばソフトパワーの「学の総本山」になるということであり、この面で世界に通用するリーダー達を輩出していくということである。

そこで、以上を踏まえて「個を強くする大学」を考えてみよう。この言葉は、特に年配者にとっては利己的なガリガリ亡者という否定的イメージを抱かせ、一時はかなり評判が悪かったとも聞いている。こうした誤解や悪評をひっくり返すためにも、そのイメージをハードパワー重視からソフトパワー重視に変換すべきである。政治や経済が前面にでると、どうしても権力闘争とか財力にものを言わせるとか、自分だけが勝てば良いといった個のイメージが強くなる。こうしたイメージから、文化のもっている人や社会を動かす力というような、そういうソフトパワーを強化する大学というイメージに組み替えていく必要があろう。つまり、政治、経済、社会、文化の順序を逆にして、文化、社会、経済、政治という、ソフトパワーが優位にたつ関係に組み替え、そのうえで強い個人を育てる大学というイメージに作り変えるのである。

グローバル化時代には、個性なくして企業も大学も生き残れない。自らの特長や歴史的基盤を活用していくことで、勝ち残りを果たすことができるのである。

(政治経済学部教授)