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孫基禎生誕100周年記念シンポジウム

右から森川氏、谷口氏、広澤氏、柳氏、伊藤氏 シンポを通じて、孫氏の平和への思いを再認識する福宮学長(左)と呉公太団長 謝辞を述べる孫基禎氏のご子息の孫正寅氏

孫基禎生誕100周年シンポジウム実行委員会(委員長=寺島善一商学部教授)は6月9日、明治大学および在日本大韓民国民団中央本部と共催で、駿河台キャンパスリバティホールで、1936年ベルリン五輪男子マラソンで金メダルを獲得した校友の故孫基禎氏(そん・ぎじょん、1940年専門部法科卒、1995年明治大学特別功労賞受賞)の生誕100年を記念し、「スポーツを通した国際相互理解という真のオリンピック精神を体現したヒーロー・孫基禎生誕100周年シンポジウム『平和への道』」を開催した。約300人の聴衆は、孫氏の思想や行動に触れ、スポーツやオリンピック、平和のあり方を考える機会となった。

シンポジウムは2部構成で行われ、第1部の記念式典は、福宮賢一学長と韓国民団中央本部の呉公太団長のあいさつに続き、寺島教授が「孫基禎さんの人生—その思想と行動」と題し、孫氏の生い立ちから、時代に翻弄されながらもマラソンを愛し、スポーツの持つ力を信じて人生を捧げたその生涯を、映像を交えて紹介した。

回想「孫基禎さんの思い出」では、元東京新聞運動部長/前中日球団代表の伊藤修氏、日本体育大学名誉教授の森川貞夫氏、芥川賞作家の柳美里氏の3人が、それぞれ孫氏との交流や、その人柄が偲ばれるエピソードを語った。

日本陸上競技選手権大会のため参加できなかった、前日本陸連女子マラソン強化部長の金哲彦氏は、ビデオでメッセージを寄せた。

休憩をはさんでの第2部のシンポジウムは、「現代のスポーツ・オリンピックが孫基禎さんの思想と行動から学ぶべきもの」をテーマに、コーディネーターに森川氏、パネリストに前出の伊藤氏、柳氏の両名に加え、スポーツ評論家の谷口源太郎氏、元プロ野球選手の広澤克実氏(1986年文卒)が登壇。それぞれの知見から、孫氏の功績を讃えるとともに、その偉業を伝え、平和のために発展させることが大切だと結ばれた。

孫基禎氏のご子息の孫正寅氏(1973年本学経営学研究科修了)が親族としてあいさつに立ち、「日本がオリンピックに参加してちょうど100年、ロンドンオリンピックを迎える今、もう一度オヤジの足跡を整理したい」と述べた上で、「本日のシンポジウムが、真実を伝えながら過去を認知し、現在のことを確認しながら、未来をともに生きることを一緒に考えるきっかけになれば」と日韓の更なる友好を祈念した。

最後に、国際日本学部教授の長尾進副学長が閉会の辞を述べ、シンポジウムは盛会のうちに終了した。

孫基禎

1912年(大正元年)8月29日、朝鮮・平安北道新義州生まれ。2002年11月15日逝去。1940年明治大学専門部法科卒業。明治大学入学前の1936年(昭和11年)のベルリン五輪マラソンに日本代表で出場し、当時の五輪新記録で優勝した。孫氏は戦後、大韓民国でマラソン競技の発展に尽力され、優秀な国際選手を多数、育成した。その後、ヘルシンキ五輪総監督、大韓陸上競技連盟会長等を歴任、1988年母国でのソウル五輪開会式では最終聖火ランナーをつとめ世界の人々に大きな感動を与えた。更に孫氏は、スポーツによる国際相互理解の重要性を唱え、平和な社会を築き上げる運動に積極的に携われた。その功績は偉大であったため、学術・文化・スポーツ等で顕著な功績を挙げた明治大学関係者に贈られる「明治大学特別功労賞」を1995年に受賞した。