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本棚『新しい国際金融論 理論・歴史・現実』勝 悦子 著(有斐閣、2900円)



本書は、とかく難解でありがちな国際金融論に気軽に取り組んでもらうため、数多くのデータと豊富な図表を用いながら、コラムでエピソードを語るなど、さまざまな工夫が施されている。

本書は全15章から構成され、まず国際経済論や外国為替相場、国際通貨制度が手際よくまとめられたのち、第11章以降はエマージング市場やプルーデング政策、通貨危機、サブプライム・ローンとリーマン・ショックなど「金融のグローバル化と国際金融システムをめぐる諸問題」を扱っている。これまで重要性を指摘されながらもあまり取り上げられてこなかったテーマであるが、グローバル化の進展、アジア・中南米諸国の台頭、EU債務危機の発生によって、差し迫った課題となっている。この分野の代表的論客である著者にとって最も得意とする分野であるだけに、金融および金融システムと国際政策協調の重要性を強調しながらの解説は白眉である。

EU債務危機に典型的に見られるように、現代国際金融を理解する上で本書は必読の文献であるといえよう。ぜひ購読をお勧めしたい。

金子邦彦・情報コミュニケーション学部教授(著者は政治経済学部教授)