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坂東玉三郎氏を招き 特別講演会「こころとかたち」を開催

「人の心に強く訴えかけるのは、現実よりも虚構」と歌舞伎の魅力が語られた

文学部は7月23日、このたび重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された歌舞伎俳優の坂東玉三郎氏をゲストに迎え、特別講演会「こころとかたち」を駿河台キャンパスで開催した。会場に集まった本学の学生をはじめとする約300人の受講者の前で、玉三郎氏は、現代社会の教育が抱える問題点や、歌舞伎の舞台上の心がまえを神山彰文学部教授との対談形式で語った。

この講演会は、文学部演劇専攻の「劇(ドラマ)を通して人間を考える」をテーマにした、日本の演劇、歌舞伎、能、狂言などの見識を深める一環として特別に開催されたもの。

最初に神山教授が、経験や勘に基づく知識「暗黙知(あんもくち)」にふれると、玉三郎氏は自らを口伝で「暗黙知」を教わった最後の世代だとし、義父・十四代守田勘弥の元での内弟子(住み込み)時代の経験を例に上げ「師匠や主人の日常生活の立ち振る舞いから、その人が1番大事にしていることを見るのが学びであり、それを見せることが教えること」と、古来の教育方法である徒弟制の意義を語った。また情報化社会についても「映像や情報から学ぶだけでは先行きが見通せなくなる」と危惧する一方で「変化を否定するのではなく、その中で真実を模索し、自分がどのように歩いていくかを見定めることが大切」と述べた。

歌舞伎の舞台上での、客観と主観を同時に持ち、観客を物語に引き込むために“体と心を殺す”工夫などについても語られ、講演テーマでもある“こころとかたち”については「様式美の世界では、形を間違えては伝わらない。正確なことを習得することで、そこに魂を込め、人に思いを伝えることができる」と、伝統芸能における型の伝承の重要性を強調した。

最後に玉三郎氏は、講演の総括として学生に「情報に惑わされず、実物をよく見ること、体験することを大切にしてほしい」との言葉を贈った。



歌舞伎俳優 坂東玉三郎
1957年『寺子屋』の小太郎で坂東喜の字を名乗り初舞台。1964年、十四代守田勘弥の養子となり、五代目坂東玉三郎を襲名。数々の受賞歴があり、2012年7月20日、重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。



文学部教授 神山彰
1973年明治大学文学部卒業、1977年同大学院文学研究科修士課程修了。1996年明治大学文学部助教授、2001年同教授。研究分野は、近代日本演劇(近代化における歌舞伎の変容と「演劇」概念の成立)。