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本棚『原発事故後の環境・エネルギー政策 弛まざる構想とイノベーション』 藤江 昌嗣ほか 編著(冨山房インターナショナル、1,500円)



電気はいつでも好きなだけ使える。3.11以前は多くの人がそのように考えていた。3.11以降、原発事故に直面して人々の対応は分かれている。少しでも早く3.11以前の状況に戻そうとする人たちがいる一方で、ライフスタイルの変化も含めた根本的な変革を望む人たちも多い。エネルギー政策と環境政策の第一人者による講演と本学の2人の教授を加えたパネルディスカッションが収録されている本書は、どちらの側からも異議が出そうな内容を含んでいるが、本書の価値はまさにその点にある。

本書には、引き算で足りない部分は原発でという主張がある。節電は発電所を作るのと同じ効果があると述べられている。地域、自治体の役割が強調されている。要するにできることはいろいろあるということで、裏付けも含めた具体的な議論が展開されている。

なかでも評者が気に入っている提案は、電力需要のピークとなる8月はみんなで休みましょうというものだ。それで経済活動水準が下がっても原発のリスクよりははるかにましではないか。

千田亮吉・商学部教授(編者は経営学部教授)