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明治大学奨学金制度充実に向けて

学務担当常勤理事 三木 一郎

学生支援部の職員が学生との対話を通し、最近学生の生活困窮者が増えているという感想を持っていることを耳にした。実際、学生の中には昼食代を節約する者、毎日の生活が大変であることを話す学生がいる。日本経済がどうなるか不透明な状況の中で、父母からの仕送りやアルバイトに加えて奨学金を得ることができれば、安心して学業に専念できるであろう。

新聞に米国の私立大学では数百万円の授業料を必要とするところもあるが、充実した奨学金制度のおかげで実際には数十万円で済む場合もあることが紹介されていた。我が国の奨学金には、大きく分けて返還の必要のない『給費型』と、卒業と同時に返還の義務が生じる『貸費型(有利子のものと無利子のもの)』に分けられる。学生にとってよいのは当然給費型の奨学金である。本学独自の奨学金にも両方のタイプがあるが、最近は給費型に力を入れている。現在は10種類近い本学独自の給費型奨学金があるが、まだまだ十分とは言えない。種類は少なくても十分な奨学金を多数の学生に給付できればよいわけであるが、その原資が問題となる。他大学でも奨学金の充実には力を入れ始めている。

米国などでは、奨学金をはじめとして学生支援体制が整備されており、特に大学院生に対しては、教員が獲得する研究費(本学の受託研究費に相当)によって大学院生を直接リサーチアシスタントとして雇い、毎月一定額を支給することができるシステムを持つところもある。このような研究室には各国から優秀な大学院生や研究生が集まり、多くの成果が発表される。本学では、このような教員の研究資金から学生に定期的に支出が可能なシステムはない。海外で博士号を取得し、日本の大学で実績を作るために本学で研究員として研究したい、あるいは博士課程に入学したいが、教員の研究資金から奨学金を出してくれないだろうかという問い合わせが教員に直接来る場合がある。現状は「そのような奨学金制度はない」と回答し、それで話は終わるようである。このような熱意に溢れる留学生や研究員を取り込むことは、本学の国際化や研究・教育レベル向上に大きな役割を果たす。研究資金による奨学金制度や運用についても緻密に検討することが必要だ。

本学では、未来サポーター募金制度を2010年度から開始している。これは、募金者が5つの寄付金の使い道から自由に選択できるものであり、『奨学サポート資金』も含まれている。これまでにない特徴を持った募金制度であり、奨学金制度の充実にも貢献するものとして期待されている。

奨学金の原資は様々考えられるが、本学で学び、社会に出て活躍されている多くの校友からのありがたい寄付金で奨学金制度を維持できるのが理想である。そのためには「明治大学で学んで本当によかった」と卒業生に満足してもらうことだ。明治大学が学生に対し、学問のみならず、できる限りの教育およびその機会を提供し、社会に自信を持って送り出すこと、そして卒業生が自信を持って社会に巣立っていけることが重要であると考える。

(理工学部教授)