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阿久悠記念館1周年 対談 重松清×飯田久彦 「星を作った男 阿久悠と、その時代」

重松氏と飯田氏の対談、映像、歌を通じて「星を作った男—阿久悠と、その時代」に触れた

明治大学は10月13日、阿久悠記念館の開館1周年を祝して、直木賞作家の重松清氏と、ピンク・レディーをはじめ多数の阿久悠作品をプロデュースしたエイベックス・エンタテインメント顧問の飯田久彦氏を迎え、対談「星を作った男—阿久悠と、その時代」を駿河台キャンパスで開催した。この企画は、講談社の共催で、オフィス・トゥー・ワンおよび阿久悠株式会社の協力のもと催されたもので、約100人の観客は、阿久悠が生きた時代に触れ、その仕事や、今も心に響く詞と言葉が紡がれたエピソードに耳を傾けた。

冒頭、松本隆栄総務担当常勤理事が両氏への謝辞を述べ、「阿久悠記念館を昭和歌謡史研究のセンターとしたい」との意欲を語った。
続く対談では、重松氏がインタビュアーとして阿久悠をよく知る飯田氏から話を聞く形式で進行。飯田氏は阿久悠との出会いに始まる貴重な思い出を披露。本格的に阿久悠と関わった仕事として、阿久悠が企画・審査に参加していたオーディション番組「スター誕生!」で発掘したピンク・レディーのプロデュース秘話を明かした。当時、レコード会社の方針に逆らってデビューさせたピンク・レディーを売り出すために、阿久悠や作曲家の都倉俊一氏、振付師の土居甫氏を始めとしたメンバーたちと、それまでのヒットチャートにない歌手と歌を目指して知恵を絞りあったことが語られた。

さらに、デビュー当時の伊藤咲子のレコーディング風景や、「スター誕生!」が生み出す新しいスター像について語る阿久悠の映像を観ながら、阿久悠が携わった「昭和歌謡」の時代と、現代の音楽の違いに話題がおよび、皆だれもが知っていて口ずさめる曲がなくなってきている現状認識について両氏は語りあった。重松氏は『時代おくれ』や『熱き心に』に象徴的に見られるように「優しくて凛としたお父さんの言葉がある。阿久悠の遺した詞と言葉は、今のような時代だからこそ求められるのではないか」と指摘した。

最後に、阿久悠がレコーディングの際にただ一度涙したという『思秋期』(歌:岩崎宏美)を流したのち両氏は、若い聴衆に向け「阿久悠の曲を含め、さまざまな出会いを持ち、たくさんの感動をして欲しい」とメッセージを送り対談を締めくくった。

閉会にあたり橋口隆二経営企画担当常勤理事があいさつに立ち、明治大学に阿久悠記念館を設置するに至った経緯を説明するとともに、今後も記念館への支援を求め、対談は盛会のうちに幕を閉じた。

(大学史資料センター)