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グローバル社会において求められる「基礎力」

法学部長 南保 勝美

現在の日本社会において、グローバル人材の育成が重要課題として位置づけられている。経済活動の担い手である企業は、国境を越えて、様々な国籍を持つ優秀な人材を採用しようとするとともに、海外での経済活動・グローバル化にも力を入れている。このような背景の下、周知のように、本学ばかりではなく各大学においても、グローバル人材の育成への取り組みを共通のミッションとして、様々な方策が試行・実践されている。

本学では、海外協定校との学術・学生交流の促進、短期留学プログラムの推進とともに、本紙第648号(2012年10月)の紙面で報じられたように、明治大学・立教大学・国際大学共同の国際機関等との連携による「国際協力人材」育成プログラム、大学の世界展開力強化事業(ASEAN諸国等との大学間交流形成支援プログラム)、グローバル人材育成推進事業の3件の文部科学省公募プログラムが採択され、その実りある実現と推進に向けて諸力が傾注されている。

このような中、真のグローバル人材とは何かが、今問われている。国家戦略会議、グローバル人材育成推進会議のグローバル人材育成戦略審議まとめ<2012年6月4日付>によると、グローバル人材の概念には、Ⅰ.語学力・コミュニケーション能力、Ⅱ.主体性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感、Ⅲ.異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーの3つの要素が含まれるとされている。単に海外に出て習得した外国語力を駆使するだけではなく、各国社会の仕組み・文化・民族・宗教などの相違を十分に認識しながら諸問題に対応できる能力が求められている。こうした能力は、まずは日本の社会における政治・文化の歴史的変遷や国際社会における現状を分析・考察し、論理的な思考力に基づき問題の本質を見出し解決する能力を養うことによって醸成されていく。

これらは従来、「基礎力」という概念で括ってきた事柄のように思われ、たとえば、私の所属する法学部では、この「基礎力」を基に、あるいはこれとともに法的観点から物事を考える「リーガル・マインド」を養成することを目標の一つとしている。現代社会は、ある事柄については規制緩和が進む一方で、ある事柄についてはますます規制強化が進行している複雑な法化社会であり、様々な制度・法律を把握するためには、幅広い観点から問題点を認識するとともに、一般の人々から納得の得られる解決を図る論理性と妥当性を追究することが必要である。そのためには、「基礎力」の形成・強化が不可欠である。

このような「基礎力」は、法の分野ばかりではなく、すべての専門領域において要求される。留学を終えて、学部の課程で新たな気持ちで勉強をしている学生たちの声の中には、海外での就学体験、あるいは海外の学生との交流から、自身の「基礎力」の欠如や、より基本を重視した勉強への意欲を感じるという者も多い。「基礎力」重視の教育は、グローバル社会においてこそ求められているといえよう。この視点からさらなるカリキュラム改善を図る所存である。(法学部教授)