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本棚『涙と花札』金 惠京 著(新潮社、1,500円)



韓流ドラマでよく観られるが、韓国では親、兄弟が死ぬと地を叩いて痛哭する。日本人はその感情の激しさにびっくりする。また葬式のあとには親戚、友人の間で花札を楽しむ。花札は日本の植民地時代に根付いた賭け事である。葬式のときにそんな遊びを楽しむとは、日本人なら不謹慎と感じるだろう。

本書では、そのような謎を手始めに、日本人・韓国人の精神文化の違いを探求する。単なる日韓文化比較ではなく、著者のこれまでの人生と家族との関わりが感動的に描かれており、そのこと自体も現代日本人の家族関係と対比させると興味深い。

著者は子供の頃から日本文化に憧れて、明治大学法学部に留学した。さらに米国でローファームや大学講師を経験し、3.11大震災を機に「日本のために役立ちたい」という思いで明治大学に戻って来た。9.11テロを身近に体験したことからテロ防止策を研究するようになった新進気鋭の国際法学者である。多文化を理解した著者の言葉は、グローバル化する社会をこれから生きなければならない我々にとって大いに参考になる。

崔博坤・理工学部教授(著者は法学部助教)