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リバティアカデミーオープン講座 偉大な作詞家の実像に迫る「阿久悠論—文化水流・神田川点描—」中野キャンパスで開催

「あなたに抱かれてわたしは蝶になる~♪」満員会場には懐かしの名曲が次々と流れ、思わず一緒に口ずさむ人も 第一声は「中野キャンパスへようこそ!」。講義では阿久悠の代表曲を流し、歌詞やその背景について解説した

リバティアカデミーのオープン講座「阿久悠論—文化水流・神田川点描—」が5月11日、中野キャンパスで開かれ、国際日本学部の吉田悦志教授が、偉大な作詞家阿久悠の半生や作詞の秘密について1時間半にわたって講演した。会場には、地元中野区民やリバティアカデミー会員ら約300人が訪れ、ユーモアを交えた笑いの絶えない講義を満喫した。

吉田教授は明治大学史資料センターの副所長で、同センターが創立130周年を機に編集した「明治大学小史-人物編」で阿久悠や古賀政男(作曲家、商学部卒)など18名について執筆している。

この日は、まず、阿久悠が好んだお茶の水・聖橋近辺の写真を示し、阿久悠が青春を振り返った文章や2007年にリリースされた曲「聖橋で」を紹介。「この場所が阿久悠の青春の起点だった。そして、最晩年の曲に阿久悠は“青春”を選んだのです」と話し、阿久悠の青春に焦点をあて講義を展開した。

そして、阿久悠が描く女性像について言及。「阿久悠は『女』ではなく『女性』を描くと自身の『作詞憲法』に記している。たとえば、『北の宿から』のフレーズ『女ごころの未練でしょう』は文末に『か』がついていない。ここで相手に問う『か』を使うのは、相手に依存する女でしかない。『でしょう』と言い切り、どんなに辛くても自立した意識を持つ女性が登場するのです。雨の慕情でも、津軽海峡冬景色でもこの女性像は変わりません」と解説した。

その後、阿久悠が出生した淡路島での生活や、結核を発病した中学時代、映画館に通い詰めた高校生活、そして明治大学への入学動機について、阿久悠が作詞を手掛けた曲を流しながら説明。「ざんげの値打ちもない」(1970年)、「白い蝶のサンバ」(同)の情景や言葉づかいなどについて、物語性や時間軸などの視点からその特徴に迫った。

最後に、「青春時代」(1976年)を取り上げ、「阿久悠の歌詞は普遍化することができる。国民みんなの心を、先取りしてつかむ能力があった」と閉めくくり、満席の会場から大きな拍手を受けた。

リバティアカデミーは、明治大学の生涯学習機関。ビジネス、資格・実務・語学、教養・文化など多様な分野で約400講座を開講し、これまでに1万6000人以上が学んでいる。中野キャンパスでも4月から各講座がスタートしている。