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本棚『世界俳句 2013 第9号』夏石 番矢・世界俳句協会 編 (七月堂、1,600円)



本書は世界俳句協会の第7回日本総会の報告をおさめた号であり、各国からの俳句や俳論も多数収録されている(俳論は5本)。ヨーロッパ諸国のみならずインドや台湾といったアジア勢、ガーナやコロンビアからの参加もあり、haikuが今や世界文学の一端としてゆるぎない座を占めていることに改めて驚かされる。主宰である夏石番矢氏の現代俳句界における貢献の大きさを思う。

私は現代俳句にはまったくの門外漢なので、本書に収録された多様な俳句/haikuの中から数句をここに紹介して、評に代えたい。

◎雲の中に/数千年の茶/ぐっと眠る(レー・ティビン、ベトナム)
◎小石ころがり/山の崩壊が叫ぶ/住めるようにせよ!(ガラムセギ=マレク・イレン、ハンガリー)
◎初めて酔った/水平線が/わが足のなか(ヒラル・M・ジハド、イラク)
◎ミモザきらきら明日の光とひきかえに(鎌倉佐弓、日本)
◎逃亡や砂漠の底に月時計(夏石番矢、日本)

21世紀において表現することの意味を、深く考えさせられる一冊である。

実村文・法学部准教授(著者は法学部教授)