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東日本大震災の風化を防ぐフォーラム—福島県沿岸の町「新地町」の取り組みを事例として—

「震災を風化させない」との思いのもと、開催されたフォーラム 会場からの質問に答える泉田さん(左)と古山さん

明治大学震災復興支援センターなどは6月15日、「東日本大震災の風化を防ぐフォーラム—福島県沿岸の町『新地町』の取り組みを事例として—」と題するフォーラムを駿河台キャンパスリバティホールで開催。新地町の職員、中学生らが講演やディスカッションを通して、震災を忘れぬよう訴えた。

新地町は、福島県最北部の太平洋岸に位置し宮城県と隣接。東日本大震災では沿岸部のみならず、JR常磐線新地駅周辺の市街地まで津波の被害を受けた。明治大学は昨年1月、復興支援に関する協定を新地町との間に締結している。

この日のフォーラムには、関係者や明大生ら約150人が出席。鳥居高商学部教授は開会あいさつの中で「東京では、東日本大震災がすでに過去のこととして受け止められつつある」と風化への危機感を示した上で、「風化を防ぐためにも本日、新地町の人たちの声に耳を傾け、(復興に向け)また新たな一歩を踏み出したい」とフォーラムの趣旨を説明した。

続いて、新地町復興推進課長の鴇田芳文氏が講演し、震災による町の被害状況や復興に向けた取り組みなどを紹介。「人手不足という深刻な問題を抱える中、職員は一人も避難せず、復興への覚悟を持って臨んでいる。『やっぱり新地がいいね』をスローガンに、顔が見える行政を目指してこれからも頑張りたい」と力強く語った。

さらに「被災地の声」と題して、生活支援相談員の目黒静子氏、NPO法人みらいと事務局長の日下智子氏、新地町立尚英中学校3年の泉田桐子さん、古山友萌さんの4人が講演。目黒氏は町内仮設住宅の現状を、日下氏は「みらいと」の活動内容などを紹介し、最後に「ぜひ新地町に一度足を運び、友達や周りの人たちに新地町の良さを伝えてほしい」と呼びかけた。

泉田さんは「家がなくなって泣いている友人を見て、家が無事だった自分は、泣いてはいけないと思った。生かされた私たちは、この震災を後世に語り継がないといけない」と話し、会場では涙する人の姿も見られた。古山さんは「当たり前の日常が“幸せ”だということは、震災がなければわからなかった」と震災後の心境の変化などについて話した。

続いてのディスカッションは、客席と講演した新地町の人たちとの質疑応答形式で進み、古山さんが「新地町には高齢の避難者の方も多いので、介護福祉士になりたい」と将来の夢を語ると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。