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参院選を振り返って 二大政党制の挫折

政治経済学部 井田 正道教授

今回の選挙は、第2次安倍政権発足後初の参院選であった。政権発足後初の参院選で与党が議席を伸ばすことは意外と難しい。比例代表制が導入された1983年から前回2010年の間で政権発足後初の参院選が8回あったが、そのうち与党第1党が議席を伸ばすことができたのは83年(中曽根政権)と2001年(小泉政権)の2回だけであり、これら2政権は結果として長期政権となった。それに対して議席を減らした政権のほとんどは、参院選後1年間持たなかった。過去の事例からすると、今回の自民大勝は、安倍政権が長期政権になる可能性が高いことを示唆している。そして、衆議院に続き参議院でも“一強多弱”となったことは、わが国における二大政党制の挫折でもあった。

選挙前から懸念されていた投票率に関しては、52.61%となり、1995年、1992年に次いで3番目に低い投票率となった。しかし95年以前と比べ、今日では投票時間の延長や期日前投票制度の導入などもあって、有権者がより投票しやすい環境になっていることもあり、単純比較はできず、95年以前の制度下であれば5割を切った可能性が高い。過去最低の95年選挙当時との共通点としては、非自民政権が挫折した後の最初の選挙であったという点である。非自民政権に対する“期待外れ”による投票参加意欲の減退が、昨年末の総選挙のみならず今回の選挙にも表れた。

また、今回の参院選よりネット選挙が解禁され、注目された。ネット選挙解禁により期待される効果としては、選挙運動にかかるコストの低下と、投票率の上昇であった。しかし、現場の声を聞くと、現状ではネットによる運動を展開したからといって従来型の選挙活動の量は減っておらず、ネット選挙により、選挙にかかるコストはむしろ増大しているという。加えて、今回の選挙が低投票率となったこともあり、全体としてみるとその効果には疑問符が付く選挙でもあった。