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阿久悠記念館 来場者3万人記念イベント“甲子園の詩”を語る

15年ぶりの再会で、握手を交わす林氏(左)と藤田氏 阿久悠の観戦ノートなども披露された

明治大学阿久悠記念館は7月20日、来館者3万人を記念したトークイベント「“甲子園の詩”を語る—阿久悠の紡いだあの名勝負—」を駿河台キャンパス・リバティタワーで開催。元NHKアナウンサーの榊寿之氏の司会で、夏の甲子園審判を20年務めた林清一氏、スポーツニッポン記者の宮内正英氏らが、阿久悠の見つめた甲子園について熱く語りあった。

阿久悠は、1979年から2006年の間、毎年、スポーツニッポン紙上で夏の甲子園観戦詩とエッセイを連載。28年間で363篇の詩を紡いだ。

トークイベントは、駒大苫小牧(北海道)-早稲田実業(東京)による37年ぶりの決勝再試合を詠んだ「2006年いい夏」の朗読で幕を開けた。その後、1979年の星陵(石川)-箕島(和歌山)戦を描いた「最高試合」、1988年の高田(岩手)-滝川第二(兵庫)の「コールドゲーム」などの作品を取り上げ、当時の様子を回想。「大熱戦に季節を織り交ぜる描写が素晴らしく、いつも原稿が届くのが楽しみで仕方なかった」(宮内氏)、「敗れた人への眼差しが感じられる。球児たちを勇気づけ、胸に大きな力を与える言葉が紡がれる」(榊氏)などと阿久悠の作品の魅力について語り合った。

後半は、林氏の“忘れられない試合”に話が及んだ。榊氏は、林氏が球審として甲子園史上初のサヨナラボークを宣告した、1998年の宇部商(山口)-豊田大谷(東愛知)の試合を紹介。この試合を題材にした「敗戦投手への手紙」が朗読されると、会場はシーンと静まり返った。すると突然、サヨナラボークを宣告された元宇部商投手の藤田修平氏が登場。15年ぶりに再会した二人は、顔を紅潮させ、がっちりと握手。粋な演出に会場は大いに盛り上がった。

この試合は、延長15回3時間52分に及び、サヨナラボーク判定には当時批判も起こった。藤田氏が「今日は林さんに会って、『僕は元気でやっています』と伝えたくて、山口県から来ました」と話すと、林氏は目を真っ赤にしながら「感無量です」とうなずいた。

藤田氏は「阿久悠さんが詩の中で『藤田修平君 来年また逢いましょう』と書いてくれて嬉しかった。誰かに感動を与えようと思って野球をしたことはないが、こんなすごい人が見てくれていたことを素直に嬉しいと思った」と振り返り、「甲子園は忘れられない、素晴らしい場所です」と締めくくった。

3万人目の来館者に認定証を贈呈

2011年10月にオープンした阿久悠記念館の来館者数が延べ3万人に達したことを記念し、この日、3万人目の認定証授与も行われた。3万人目となったの は栃木県鹿沼市から来た黒沢昇さん(文学部卒)。「中央図書館を利用する合間に、阿久悠作詞の曲を聴こうと記念館に立ち寄った」と驚いた表情。トークイベ ント終了後、阿久悠の子息、深田太郎さんから認定証と記念品(書籍『甲子園の詩』、阿久悠作詞CD全集『人間万葉歌(正・続)』)を手渡され、うれしそう な表情を浮かべていた。

関連企画のお知らせ

阿久悠と“甲子園の詩”に関連した企画が予定されています。こちらもご注目下さい!

    ○明治大学阿久悠記念館(入館無料)
    企画展示「阿久悠と“甲子園の詩”」
    期  間:7月20日~8月末(8/10~16は休館)
    開館時間:10:00~17:00

    ◯出版物
    『甲子園の詩』幻戯書房 2,940円(税込)

    ◯テレビ放送
    「敗れざる君たちへ—“甲子園の詩”を巡る旅」
    8月8日 NHK総合 22:00~22:45(放送予定)