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本棚『大相撲の見かた』桑森 真介 著(平凡社新書、780円)



学生相撲の現役時代に現高砂親方と好勝負を繰り広げ、その後スポーツ・健康科学の研究者の道を歩んできた著者による待望の一冊である。大相撲人気低迷の一因に、2006年1月場所(栃東)を最後として日本出身力士の優勝者が出ていないことが挙げられるが、著者はこれを否定的に捉えず「要は、相撲の内容が素晴らしく、見ている者を魅了してくれれば、日本人であろうが外国人であろうが、大いに拍手を送りたい」という。むしろ連綿と伝えられてきた相撲の基本を忠実に体現しているのは、朝青龍、白鵬、日馬富士らのモンゴル勢であるとも。また、補論にある「科学データで読み解く、ちょっとディープな相撲のはなし」も是非一読いただきたい。「押さば押せ、引かば押せ」に代表されるように、相撲技術の基本中の基本が押しであることは私たちも理解している。しかしそれも単純な前への押しではなく、押し上げるようにすることで自分の足裏と土俵の間の圧力が高められ、より効果的に押せるようになることなど、本書には「目からウロコ」が満載である。

長尾進・国際日本学部教授(著者は商学部教授)