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『組織の理論社会学—コミュニケーション・社会・人間—』 竹中 克久 著(文眞堂、3,500円)



私たちは学校、会社、病院など各種の組織の内で、またそれらに取り囲まれて生きている。組織と無縁で生きている人は存在しないし、存在しえないだろう。その意味で組織の分析は私たちに最も大きな影響を与えるものの解明に他ならない。

組織を分析する切り口として経営学・経済学的方法がよく見られるが、本書で著者は社会学的方法を採る。著者は、「組織は合理的である」という前提を否定することから始め、組織が当事者間のコミュニケーションから成立すると主張し、「舞台としての組織」という視点を提示する。人々のコミュニケーションが最初にあり、コミュニケーションが行われる「舞台」として組織が存在するという。コミュニケーションを軸として、組織目的、組織構造、組織戦略、組織文化など、組織論で不可欠の概念が見事に整理されていく。

本書によって組織に対する見方は確実に変わるだろう。組織に関して学んでいる研究者、学生はもとより、組織運営に携わる人、組織のあり方に疑問を持つ人に一読をお薦めする。

友野典男・情報コミュニケーション学部教授(著者は情報コミュニケーション学部講師)