Go Forward

リバティアカデミー 「稲むらの火」の教えを現代の津波防災へ

津波の脅威を再認識し、濱口梧陵の教えを防災に活かす

リバティアカデミーと和歌山県、内閣府は10月26日、江戸時代に発生した安政南海地震の際に「稲むら」に火を放ち村人を津波から守った濱口梧陵の功績を知り、防災を学ぶ「濱口梧陵シンポジウム」を駿河台キャンパス・アカデミーホールで開催した。

濱口梧陵は和歌山県に生まれ、1854年に安政南海地震が発生した際、高台の「稲むら」に火を放つことでいち早く津波からの避難を村人に促したことで知られる。その後も私財を投じて堤防を築いたことで、村人の生活再建を支えると同時に将来の津波来襲を見越した備えを固めるなど、現代の防災にも通ずる画期的な対策を行った。

冒頭にあいさつに立った内閣府政策統括官の日原洋文氏は、「災害時には『逃げる』ことが非常に大切。そのためには何が危険かを語り継ぐ必要がある。命を落 とす方が一人でも少なくなるよう、今日のシンポジウムで感じたことを周囲の人にも伝えてほしい」と会場に集まった約550人に呼びかけた。

シンポジウムの前半では、関西大学社会安全研究センター長の河田惠昭教授が「濱口梧陵の意志を風化させない減災対策」をテーマに基調講演を行った。河田教 授は濱口梧陵が実施した「稲むらの火」や堤防建設などの対策を紹介し、これらの考え方を現代に応用しながら減災対策の必要性を訴えた。続けて、日本が直面 する脅威として、首都直下地震と南海トラフ巨大地震の被害想定を紹介。南海トラフ巨大地震による大津波が太平洋沿岸の広範囲に繰り返し押し寄せるシミュ レーション映像が上映され、これにより30万人を超える死者が想定されると紹介されると、会場は静まり返った。

河田教授はこの地震と津波への対応策として、行政側の避難計画策定に関わる課題を提示し、住民側に対しても「自治体が公開している浸水予測情報等を事前に 調べ、津波が発生した場合にまずは何も持たずに安全な場所に逃げる」といった心構えを説いた。さらに「携帯電話に頼らずに、家族一人ひとりがどこにいるか を常に把握する努力」や、「食糧生産や物資の輸送に多大な影響が出るため、家庭内の備蓄を増やす工夫」など、日頃から取り組むべき備えの重要性を訴えた。

後半は河田教授の進行の下、パネルディスカッションが行われ、ドラマで濱口梧陵を演じた俳優の石丸謙二郎氏、小説で濱口梧陵を描いた作家の大下英治氏、本 学特任教授で都市防災や復興の研究を行う中林一樹教授、和歌山県知事の仁坂吉伸氏が、それぞれの立場から濱口梧陵の功績を解説した。