昨年8月、政府は小松一郎駐仏大使の内閣法制局長官就任を発表した。このニュースの問題の本質はおそらく、同局の内部昇格の慣例が破られたこと自体にはない。もともと首相に法解釈が近いことで知られ、「職務性」に不適格とされる外務官僚が任命されたこと、いわば政治の主導性よりは恣意性の有無にある。
本書は、内閣法制局の組織と人事について平明に解説しながら、むしろ政治による法の恣意的解釈の歯止めとなりうる同局の役割に注目する。著者によれば、政府の法律顧問である同局は「政府のやったことは正しいと解釈」する点では「権力の侍女」という顔を持つ。だが同時に、内閣法制局は「法の番人」というもう1つの顔を合わせ持つ。実際、戦後同局は権力に寄り添いながらも、「これまで積み重ねてきた法体系の一貫性」に基づいて法を解釈することで、権力をある範囲内に制限してもきたのだ。さて、今後はどちらの顔を覗かせるのか、国民は注視していく必要があるだろう。そのために本書は、今こそ読んでおきたい一冊である。
髙山裕二・政治経済学部講師(著者は政治経済学部教授)
本書は、内閣法制局の組織と人事について平明に解説しながら、むしろ政治による法の恣意的解釈の歯止めとなりうる同局の役割に注目する。著者によれば、政府の法律顧問である同局は「政府のやったことは正しいと解釈」する点では「権力の侍女」という顔を持つ。だが同時に、内閣法制局は「法の番人」というもう1つの顔を合わせ持つ。実際、戦後同局は権力に寄り添いながらも、「これまで積み重ねてきた法体系の一貫性」に基づいて法を解釈することで、権力をある範囲内に制限してもきたのだ。さて、今後はどちらの顔を覗かせるのか、国民は注視していく必要があるだろう。そのために本書は、今こそ読んでおきたい一冊である。
髙山裕二・政治経済学部講師(著者は政治経済学部教授)