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本棚 シリーズ 【ことわざに聞く】(4)『笑いとことわざ』日本ことわざ文化学会 編(人間の科学新社、1,800円)



ことわざは機知に富んだ笑いの宝庫である。この理を承知の上で読み始めたが、両者の関係に踏み込んだ論考からは、これほどにも多彩で開放的な世界が見えてくるものか、と驚嘆させられる。

その冒頭で山口政信法学部教授は、《笑いは革新的な志向に依存する》と述べている。ことわざについては《安住のための変革》を促す存在であると論じ、笑いとことわざの間に確かな橋を架けている。小森英明氏が繙く『禅林句集』から見えてくるのは、目に見えない言霊の身心性であった。絵画に秘められた物語に着目した論文が多いのも本書の特徴である。森洋子名誉教授は中世に見る図像から、笑いに満ちた教訓ことわざを掘り起している。高木亮氏は自作『きりえやかるた』、時田昌瑞氏は双六、小林優氏は『教訓浮世眼鏡』に架橋して愉しませてくれる。

そのほかにも教育への応用、社会や世相の研究など、興味の尽きない論文やコラムが数多く掲載されている。なお余談ではあるが、山口教授が編著した『笑い笑われまた笑う』(リバティアカデミー)も、一読に値する好著であることをお伝えしておきたい。

萩原芳子・文学部教授