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本棚『建築請負契約の法理』平田 厚 著(成文堂、5500円)



平田厚教授は、1990年以降、弁護士として各種の建築紛争に関与するとともに、2004年以降は、本学法科大学院の民法講座の教授としても、ご活躍されている。

請負契約で問題となる仕事の内容には、スーツの仕立てのように短期で完成するものから、建物の建築の完成のように長期間を要するものまである。民法の請負契約ルールは、請負に関する一般的ルールを定めたものであるため、建築請負の実際界では「約款(やっかん)」と呼ばれる詳細な定型契約書が用いられる。建築請負契約の検討には、実務界の現状を十分に踏まえることが不可欠であり、平田教授の持ち味が発揮されうるテーマである。

本書では、「建築」請負契約の成立から終了に至る各種の法的諸問題が、ここ100年間の約100件の判例・裁判例を素材に、ほぼ網羅的な検討が加えられている。その意味で、本書は、この分野に関心のある研究者・実務家にとって、非常に参考となる必読の労作であり、ぜひとも一読をお薦めしたい。

三林宏・法科大学院教授(著者も法科大学院教授)