社会連携の現在—地域に生きる人々との連携
副学長(社会連携担当) 藤江 昌嗣
社会連携は、教育、研究と並ぶ本学が果たすべき3つ目の柱である。教育、研究成果の社会への還元を行い、以て社会貢献を行うものと理解されているこの「社会連携」について、以下では、今少し踏み込み、私見を述べてみたいと思う。
本学の社会連携活動推進における基本姿勢及び倫理は、「明治大学社会連携ポリシー」(1.環境保全・平和利用、2.主体性・自主性の尊重、3.情報の公開と管理の原則、4.法令等の遵守)に示されている。また、社会連携の基本方針は、教職員、学生、学内諸機関が、校友会、父母会をはじめとする学外諸機関と連携し、本学における特色ある教育・研究の展開・促進を、地域連携活動の支援、生涯学習機会の提供等を推進することにより実現し、地域社会の活性化及び社会の発展に寄与することである。
社会連携活動は、具体的には、(1)明治大学を拠点とした、世界につながるヒューマンネットワークの構築・拡充すなわち、国際社会連携の推進、(2)教育・研究・社会連携という大学の中核機能の高度化による社会と地域の発展への寄与、(3)地域社会・産業・行政等との連携による社会的課題に対応するプロジェクトの推進、(4)主要キャンパス等における生涯学習の機会提供、(5)人権、男女共同参画、環境保全、文化の発信、スポーツ振興、平和教育に関連した社会貢献活動の推進・支援等—であり、地域を核とした地域連携活動、国際的な貢献活動、研究・知財戦略機構を中心とした研究成果を活用した産学連携活動等幅広いものであるが、その本質は「地域に生きる人々との連携」にあると考える。
2014年4月における我が国の地方自治体数は1,718であり、1889(明治22)年の「明治の大合併」後の15,859に比べて10.8%と一割に減じている。自治体の消滅を含む減少であり、機能の低下は社会連携のあり方にも影響を与えている。
地域の人々は、その生業や地域の消滅を防ぐために地域活性化事業を工夫し、自治体も住民へのサービスを維持するために遣り繰りを工夫する。創立者出身地の3地域を含む学生派遣プログラム等はこのことを知り、連携の内容と方法への具体的思考を磨くものであり、学生の実践への大きな動機づけとなっている。また、高齢化の進む都市や地方では、その維持のためのマンパワーの確保等困難な課題を抱えている。キャンパスの所在する地域等での社会連携は、こうした課題への対応も余儀なくされていくであろう。総合大学とは言え、機能を補完する大学間の連携も益々重要性を帯びてくるであろう。
また、東日本大震災や東京電力福島第一原発の放射能汚染問題は、自らの住むあるいは自らの統治する自治体の「喪失」という状況を生みだしている。ここには、「地域」とはたんに行政区域としてのそれではなく、生きる場所としての「地域」と記憶もしくは風景としての「地域」の併存がある。
社会連携の取り組みは、教育や研究の成果の還元であるが、この還元のための応用方法や還元の担い手の育成は焦眉の課題であり、とりわけ「地域に生きる人々」への関心と連携の志をもつ人材育成が課題となる。この点は明治大学のOB・OGが最もその成果を蓄積されてきている得意分野であり、その継承は必須である。
(経営学部教授)