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国際総合研究所(MIGA)などが政策提言

『公海から世界を豊かに~保全と利用のガバナンス~』 発表会見後、山本担当相に提言書を提出

提言書を山本担当相に手渡した 「日本から世界へ問題提起していく」と川口特任教授

明治大学国際総合研究所*(MIGA、所長:林良造特任教授)と海洋政策研究財団(OPRF)が共催する「公海のガバナンス研究会」が、『公海から世界を豊かに~保全と利用のガバナンス~』と題する政策提言書を取りまとめ、6月13日に東京都内で発表会見を行った。海洋酸性化や地球温暖化、生物多様性の消失などの危機に立つ公海の保全のため、日本や国際社会に取り組み強化を求める内容。同研究会は会見後、山本一太海洋政策・領土問題担当相に提言書を手渡した。

同研究会は、国際総合研究所の川口順子特任教授(元環境相、外相)と海洋政策研究財団の寺島紘士常務理事が共同代表を務め、明大関係者5人を含む各界の専門家や政府関係者ら14人で構成。約1年間にわたり、公海を中心とする現在の海洋が置かれた状況や、抱える問題点などを議論してきた。

80ページにわたる提言書では、人類が引き起こした海洋酸性化や地球温暖化、違法かつ無秩序な乱獲による漁業資源の減少・枯渇など、公海をめぐる多様な問題の所在を指摘。さらに、公海の保全や持続可能な利用に向けた国際社会の取り組みや枠組み構築が不十分であるとした。

その上で、国際社会における枠組みとして「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の海洋版の設立や、海洋に関するハイレベル政府間フォーラムの設 置、さらに国内では閣僚レベルの公海チームの設置、産学官民が協同で取り組む「公海フォーラム」の設立など、今後の取り組みに関する提言を行っている。

会見には川口特任教授、寺島常務理事ら研究会のメンバー4人が出席。集まった報道陣を前に川口特任教授は、今回の提言の特徴として「公海の持続可能性に焦 点を絞り、具体的な政策提言をしている」点を挙げた。その上で今後、川口特任教授もメンバーに名を連ねる国際的な有識者会議「世界海洋委員会(グローバ ル・オーシャン・コミッション)」や、日本政府など多方面へ向け、積極的に提言を行っていく方針を示した。

*国際総合研究所

明治大学研究・知財戦略機構の付属研究機関「特別推進研究インスティテュート」の一つ。世界の発展に向けた日本の役割の再定義と、世界の発展のため乗り越えるべき共通課題の2点を研究分野の軸としている。

世界的水準の研究を進める特別推進研究インスティテュートには、ほかに「先端数理科学インスティテュート」と「バイオリソース研究国際インスティテュート」がある。

公海

いずれの国の領海や排他的経済水域などにも含まれない海洋のすべての部分。1958年4月にスイス・ジュネーヴで作成された「公海に関する条約(公海条約)」によれば、すべての国が他国に配慮した上で、公海での航行の自由▽漁獲の自由▽海底電線や海底パイプラインを敷設する自由▽上空を飛行する自由—を認められている。