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大学改革と大学の国際化 

副学長(国際交流担当)勝 悦子

大学改革が叫ばれて久しい。2012年8月には、文部科学省中央教育審議会が、「予測困難な時代において生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ」と題した報告書を公表した。これは、不確実な時代において、答えのない問題に解を見出していくには、批判的、合理的な思考力等の醸成が必要なこと、想定外の困難に際して的確な判断をするためには、基盤となる教養、知識、経験などが必要であるとして、学士課程教育を質的に転換する必要があることを示したものである。

「学士力」を育むためには、ディスカッションやディベートといった双方向の授業やインターンシップ等の教室外学修プログラムなどによる主体的な学修を促す学士課程教育が必要となる。確かに、日本の大学の授業はこれまで講義中心であり、インプット(どの程度の時間講義を行うか)が重視されてきたが、今後はインプット(授業時間)重視からアウトカム(学修成果)重視へと確実に変わっていくことになるだろう。

一方、日本では授業に関連する学習時間が1週間当たり6時間以上の学生が、全体の33%に過ぎないのに対し、アメリカでは学生の85%以上が6時間以上の学習に励んでいる(東京大学調べ、2007年)。こうした状況を変えるには、アクティブラーニングの活用、GPAを実質的に利用して学習指導の指針とすること、就職活動において企業もGPAを重視すること、などが重要となる。

国際的にみると、1999年の「ボローニャ宣言」以降、欧州域内の国際競争力の向上を基盤とした域内の学位等の国際通用性の確保のため、「ボローニャ・プロセス」が進行したが、このように、大学の国際化とは、学生の移動が活発化するなか、単位互換を容易にするための教育基盤の国際標準化そのものでもある。さらには、国際通用性のあるカリキュラム、国際通用性のある教授法、国際通用性のあるガバナンスなどが必要となる。

今まで大学の国際化は、2008年の福田内閣下での留学生30万人計画のように、留学生の受け入れの増大が主流であった。しかし、英語圏以外の国でも英語による学位プログラムが主流となり世界的に学生のモビリティが高まっている現代では、大学の国際化は、大学教育改革そのものであると言っていいだろう。

翻って本学では、2009年に開始され2013年度に終了したグローバル30事業で、目標値の1,600人の留学生受け入れ(短期プログラムを含む)を達成し、そして6つの英語学位プログラムが稼働した。これら英語学位プログラムを主体とした、海外トップスクールとの共同プログラムの構築は、本学の教育にも大きな影響を与えるだろう。さらには、グローバル人材育成のため、送り出し強化、キャンパス全体を異文化体験の場とすることなどが必要となろう。

これらを推進するには教職員の多様化(外国人、女性の活用)と質向上が、何より求められる。そしてこれらを推し進めるには、本学の特性を生かしたガバナンス強化が最も重要な課題となろう。

(政治経済学部教授)