現代心理学の開祖とされるグスタフ・フェヒナーの研究の深層を丹念に追った力作である。フェヒナーは刺激量と感知の関係を法則化した功績で、現代心理学の歴史に名を残している。しかし、もし今日の心理学の展開を目の当たりにしたならば不満をもらしたにちがいないという。なぜなら、人間をモノとして見る最近の風潮は、彼が「闇の世界観」として退けるべき対象そのものであったからだ。
彼は、人間はもとよりあらゆる生命の根源的な有り様に「光の世界観」を見出している。それが伝統的な「生命(ゼーレ)」の概念である。その観点からすると、昨今の人間研究は機械仕掛けの脳モデルに堕しているわけだ。生命が伴わない死物の研究は、どこまでいっても核心には至らないというのが彼の指摘だ。
自然科学の支配が人間研究におよぶ事態にフェヒナーは警鐘を鳴らしていたが、その事実は忘れられてきた。現代心理学の開祖と誤解された研究者の、伝え残したかった真の営みを掘り起し、再度光を当てるという意義が、この大著にある。
彼は、人間はもとよりあらゆる生命の根源的な有り様に「光の世界観」を見出している。それが伝統的な「生命(ゼーレ)」の概念である。その観点からすると、昨今の人間研究は機械仕掛けの脳モデルに堕しているわけだ。生命が伴わない死物の研究は、どこまでいっても核心には至らないというのが彼の指摘だ。
自然科学の支配が人間研究におよぶ事態にフェヒナーは警鐘を鳴らしていたが、その事実は忘れられてきた。現代心理学の開祖と誤解された研究者の、伝え残したかった真の営みを掘り起し、再度光を当てるという意義が、この大著にある。
石川 幹人・情報コミュニケーション学部教授
(著者は情報コミュニケーション学部准教授)
(著者は情報コミュニケーション学部准教授)