Go Forward

著者が語る「寄付のススメ」世の中を良くして自分も幸福になれる「寄付」のすすめ

自分の“資”を活かすことが、寄付につながる

東洋経済新報社より発売中 1500円(+税)

寄付というと、“特別な人たちがするもの”というイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。たとえば、社会貢献やボランティアに関心がある人、世の中を変えたいという意識の強い人、あるいは、経済的にゆとりのある富裕層等々…。私もこの本を書くまで、寄付をする人たちに対してこのようなイメージしか持ち合わせていませんでした。しかも、寄付とは個々による自発的な行為であり、日本人特有の“陰徳の美”から、寄付をしていることを人に話すことは何となく憚られるのではという思い込みもありました。

しかし、取材を通して、実際に寄付をしている人たちというのは、会社員やOL、主婦などごく普通の人たちが多く、何もお金持ちや社会貢献活動に関心の高い人たちばかりではないということ。また、寄付の方法も様々で、無理なく、楽しみながら、自分ができる範囲で実践されていることがわかりました。そして、彼らの表情や佇まい等から、寄付という行為そのものが、彼らの生き方や価値観、ライフスタイルに彩を添え、日々の暮らしに充実感や幸福感をも与えていることを知りました。確かに、最新の心理学の研究でも、「誰かのためにお金を使うと、自分の幸福度が増す」ということが実証されてきています。

また、日本には寄付文化がないと言われますが、歴史をひも解くと、仏教を背景としたお布施や寄進、地域の金融・共済機能を果たす頼母子や講、みんなで力を合わせて橋や道路等を建設する自普請等、日本ならではの寄付事例をいくつも発見することができます。

寄付の方法も、震災時に見られた金銭による寄付以外に、活かされないままになっている衣料品や食品等の物品、時間や声援、労働力の寄付(ボランティア)、シニアの方であれば、これまで培ってきた知恵やスキル、技術等、どんなものでも寄付になります。

今こそ、先人たちが育んできた寄付文化を見直し、地域社会、組織、学校で、一人ひとりができることをする。そうすることで、みんなが暮らしやすいより良い社会が実現できるのではないかと思っています。

〈近藤由美・プロフィール〉
ノンフィクションライター。1991年文学部史学地理学科卒。複数の出版社で編集者として勤務の後、独立。マネー誌の創刊に参画したことが契機となり、文化人類学や考古学、心理・哲学の視点から、お金の未来、役割について考察している。