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明治大学博物館の使命と課題

博物館長 風間 信隆

明治大学博物館が2004年4月にアカデミーコモンの地階に新たに開館してから10周年を迎えた。この間、法人・教学一体となった全面的なご支援を受け、さらには450人を超える「博物館友の会」の皆様の多大なご協力とご支援にも支えられて、今では年間7万人を超える、幅広い年齢層の来館者をお迎えするまでに至っている。今年の夏休みには明治大学と震災復興支援協定を締結している、岩手県大船渡市の市立博物館において「明治大学コレクションの世界—氷河期から昭和まで—」と題する特別展を開催するとともに、小学生を対象とした子供埴輪教室や成人大学講座も開講し、多くの市民の方々にご参加いただいている。こうした取り組みを通して明治大学の社会的発信力、ひいてはブランド力の強化に貢献しているものと確信している。

大学博物館は、本来、大学と一般社会をつなぐ窓口として、大学での教育・研究の成果を広く社会に発信することを大きな使命としているが、新博物館が誕生してからは、常設展示だけではなく、特別展示室を活用し、全学的な学内共同利用機関として、明治大学における学術資源や研究成果を広く社会に発信する場としても活用されることが期待されている。

明治大学博物館の特色ある、歴史的に価値ある収蔵資料は、その長い歴史の中ですでに30万点を超えており、さらにこうした貴重な資料と一体化した研究・教育の特色ある取り組みが、全国の大学博物館の中でも独自の存在感を高めている。今後も引き続き収蔵資料の一層の充実を図るとともに、こうした貴重な収蔵資料に関わる調査・研究機能とその社会的発信力の強化にも一層努力する必要がある。この点で総合大学としてのさまざまな「知」の宝庫と言える学部・大学院や研究・知財戦略機構との連携を強化することが、博物館の今後の発展にとって極めて重要であると考えている。こうした点から、博物館運営の基本方針を決める上で、全学的観点からの多様な情報を集約し、「全体最適」を目指す意思決定機関を設置することが喫緊の課題である。

現在、博物館は3つのミッション(1:収蔵資料の管理と教育・研究機能の拡充、2:学内共同利用機関としての機能拡充、3:社会貢献・社会連携の拡充)を掲げ、明治大学における「知の社会発信」の役割強化を目指している。リニューアル・オープン10周年という、一つの大きな節目に当たり、この間の学術研究の進歩を踏まえ、新たな知見を取り込んだ、常設展示コンテンツの見直し作業を進めているが、同時に大学博物館の一層の充実・発展に向けて新しいステージに相応しい博物館機能の拡充・強化を目指している。特に近年の情報通信技術の発達に伴い可能となったデジタル技術とインターネットの活用による「ユビキタスICTミュージアム」の実現に向け、そのデジタル・コンテンツの充実に取り組み、「いつでもどこでも」博物館の展示内容を閲覧でき、関心を持った展示内容の解説も多言語で読める、展示内容の「バーチャル化」を推進する一方、こうしたICT化が進展すればするほど、「リアル」な世界である博物館における展示内容や展示方法の新たなコンセプトの創造もますます求められており、明治大学博物館もその絶えざる革新を推進していかねばならない。
(商学部教授)