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理工・相澤教授らが立体的な肝臓組織の作製に成功

マウス移植でも成果、実用化や他臓器への応用目指す

アパタイトで作った足場材料の電子顕微鏡写真。細胞が進入可能な気孔が連なる 培養により構築された立体的な肝臓組織(再生肝オルガノイド)

理工学部応用化学科の相澤守教授はこのほど、東京慈恵会医科大学の松浦知和教授との共同研究により、立体的な肝臓組織の作製技術を開発した。細かい穴が多数開いた状態に加工したアパタイト(燐灰石=骨や歯の主成分)を足場材料とし、そこに肝臓の細胞を培養して三次元組織を構築するもの。マウスへの移植でも成果が確認されており、相澤教授らは10年後の実用化や、他臓器も含めた再生医療への応用を目指している。

この研究は、文部科学省の2011年度「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(大型研究)」に採択された、相澤教授の研究課題「生命機能マテリアルによる次世代再生医療技術の構築および垂直統合型研究拠点形成」の一環。

まず、アパタイトで作った足場材料にマウスの肝臓や毛細血管の内側の細胞などを培養し、直径15ミリ・高さ18ミリ程度の立体的な肝臓組織「再生肝オルガノイド(ミニ肝臓)」を作製。それを足場材料とともにマウスの体網および腎臓に移植し、8週間後にそれを摘出すると、移植した組織がうまく生着しており、肝臓でつくられるタンパク質「アルブミン」の合成も確認された。

臓器再生の研究においては、立体構造を持つ臓器の作製が技術的に大きなハードルとなっているが、この手法を用いれば、肝臓のみならず他の臓器の再生にも応用できる可能性がある。

相澤教授らは今後、作製した肝臓組織を移植することで、低下した肝機能の一部を回復させる治療法の確立を目指すとともに、「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」を使用して立体的な肝臓組織を作る研究も進めていく方針。