グローバル・キャンパスと和泉の役割
和泉委員会委員長 飯田 年穗
昨今、大学のグローバル化が叫ばれ、教育・研究の国際化の事業が矢継ぎ早に企画されるようになった。本学においても、2009年の「グローバル30」に続き、2014年には「スーパーグローバル大学創成支援」(以下、SGU)にも採択され、全学をあげてグローバル化が進められている。明治大学は4つのキャンパスを擁しているが、それぞれのキャンパスで、その特性と機能に見合った、大学のグローバル化に向けての役割を果たしていくことが求められている。
文系6学部の1・2年次生と教養デザイン研究科の大学院生を受け入れている和泉キャンパスは、「教養教育の拠点」として位置付けられてきた。SGUにおいても初年次教育の強化がうたわれており、外国語を中心にした多様なコミュニケーション力の育成や、学習に対する動機付けなどのリテラシー教育は、とりわけ入学直後から行われることが効果的である。さらに、国際的な学びを目的とした、国際教養や異文化理解などの導入教育を集中的に展開するためには、今後、グローバル・キャンパスの整備を見据えて、和泉が全学的な初年次教育におけるハブ的機能を担っていくことが期待されるだろう。
この際、留意しなければならないことは、国際化にかかわる教育の効果が、すべての学生を対象としたものであるべきだということだ。TOEICの高得点者が増加する一方で、英語によるコミュニケーションがままならない学生がなお残っている現状を見逃すわけにはいかない。グローバル・キャンパスといっても、やはりかなりの学生にとってはいまだ実感の薄いものでしかなく、それは、外国との付き合いから切り離されてきた日本全体の庶民的な感覚を反映してもいる。
いま、SGUの目指すグローバル・キャンパス構想の推進にあたっては、それによってグローバル化していくキャンパスを日常化するという視点が、特に重要になると思われる。その点で、和泉のメリットは、混住型の国際学生寮がキャンパス内に計画されていることである。すでに近隣にはインターナショナルハウスもあり、これらを活用して留学生・外国人研究者と直接触れ合うコミュニティの場が実現される。こうして国際教養科目と連動しながら、国際・異文化交流やアクティブな学びにつながる実践的活動を日常的なものとすることで、どのような学生でも、常に外国語の聞こえてくるキャンパスにいながら「キャンパス内留学」を体験することが可能となるのである。そして、ここから全学的なシナジー効果が生まれてくる。
現在、国際大学との連携で「留学生フェスティバル」の企画も進められているが、国際的な学びの場が単なるスローガンにとどまらず、学生一人ひとりの日頃の学びの中に内実化されたものにしていく取り組みを牽引するリーディング・ポジションの位置に立つことが、和泉の責務だと言って過言ではない。このことを踏まえて、新教育棟(仮称)の建設を含め、和泉キャンパスの先行的な整備が強く望まれる。
(政治経済学部教授)