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総合的教育改革に向けて

商学部長 出見世 信之

明治大学は、現在、総合的教育改革を準備している。2008年に文部科学省の『学士課程教育の構築に向けて』が公表されてから、半期15回1コマ90分という法定授業時間を確保することが各大学に求められ、本学においても、2012年より学年暦の検討が始められている。改革は、現状を改善するために行われるものであるが、総合大学における総合的な改革の影響は、大学全体のみならず、教職員や学生にも及ぶことになる。半期15回の授業時間を確保するために休日の一部に授業が行われているが、それでも、すべての曜日で15回の授業を行えないこともある。暦に関係なく、授業時間を確保するために、定期試験をこれまでより2週間ほど遅らせたり、入学前の3月に新入生ガイダンスを行ったりすることなどの方策も検討されたが、これらは学年暦を今まで以上に硬直化させることになり、半期14回1コマ100分の授業形態が選ばれたのである。

全国的な大学改革の動きに呼応して、現在の7講時制は、6講時制に移行することになる。大学は、教室や施設の整備などに取り組むことになり、各学部、各研究科、各専門職大学院は、現行のカリキュラムや時間割を見直し、学生が円滑に授業を受けられるように工夫することが求められる。現在の教育の質を維持しながら、改革を実施することは容易ではないかもしれない。ただ、1時限や6時限をより有効に利用することができれば、状況はかなり変わる。個々の教員は、「今までやってきたから」という理由だけで,これまでのやり方を続けるのではなく、よりよい教育を行うためにどのようにすればよいかの観点から見直すことが求められる。

総合的教育改革は、教育のあり方を質の向上の観点から見直す、絶好の機会である。たとえば、少人数教育は、教育の質の点で、多人数の授業よりも高いかもしれないが、公平性の点では問題になる。すべての教員や学生が少人数クラスの恩恵を受けることができないからである。従って、履修者数の少ない授業であれば、隔年開講などの工夫が求められることになる。本学は、多様な授業を提供することにより教育の質を高めてきたため、同規模の他の大学に比べると、授業数が多く、こうした方向を続けることは困難である。この点においても見方を変えることが必要である。

学生諸君には、事前学習や事後学習を含め、自身の未来開拓力を向上できるように、個々の授業に主体的に取り組むことが求められる。個々の教員は、学生の学びたいという意欲に応えられるよう、自らの研究成果を活用しながら、授業のあり方を見直すことが求められることになる。その際、これまで国内で行われてきた教育方法を基準とすることなく、グローバルな視点から見直すこともできる。総合的教育改革の目的は、教職員にとっても、学生にとっても明治大学をよりよいものにすることである。教職員が一丸となって、改革を前向きに捉え、今までとは異なる思考様式で、新しいことに取り組みたい。

(商学部教授)