「民藝」と聞いて多くの人が連想する、田舎風で、素朴で、昔ながらの生活道具——本書は、こうした一般的な「民藝」観を大きく更新してくれる。民藝は、日常的な生活道具のうち、素朴さのなかにも美しさをたたえたものを特に指す言葉なのであり、だから民藝は、わたしたちの精神世界を、モノの世界と架け渡してくれる。このとき、「わたし」と「モノ」の相互作用として生じる、両者の架け橋こそが、本書が掲げる「インティマシー」(いとおしさ)という概念なのだろう。そして民藝の後背には、人間の手や、知恵の確かなはたらきを感じさせる、生活世界の拡がりが控えている。わたしたちの精神は、そのようにして、社会との連続性のなかにようやく位置付けられるのである。
また民藝は、日常に属するものであるからこそ、いつの時代も新たに創造されている。たとえば、ふとした瞬間にいとおしさを感じる、普段使いの美しい小物。本書は、そんな何気ない小物からも、わたしたちの世界のあるべき姿の現在形が見えがくれしていることを、気付かせてくれる。
門脇耕三・理工学部講師(著者は理工学部准教授)
また民藝は、日常に属するものであるからこそ、いつの時代も新たに創造されている。たとえば、ふとした瞬間にいとおしさを感じる、普段使いの美しい小物。本書は、そんな何気ない小物からも、わたしたちの世界のあるべき姿の現在形が見えがくれしていることを、気付かせてくれる。
門脇耕三・理工学部講師(著者は理工学部准教授)