Go Forward

グローバル人材育成に向けて

政治経済学部長 鈴木 利大

科学の進歩により、生産、情報通信技術は飛躍的に発展し、世界各国は文化、政治、経済の側面で格段の国際的連携を深化させています。環境、ビジネス、貧困といったいろいろな問題に対応するには、もはや一国ベースで考え行動するのでは、これらの問題に対処ができなくなっています。このような状況において、社会は、自国を起点にして物事を考えるのではなく、地球規模で物事を考え行動するグローバル人材を強く求めています。このために、自らの国を熟知した上で、グローバルな視点で物事を考え行動することが必要になります。そして、充分な語学力を基礎に、積極的に自らの意見を述べ、他の人の意見を十分に理解し、一つの結論を導き出すことが重要です。

この際、大事なことは、語学力は間違いなく必要条件でありますが、世界各国の政治、経済、文化、歴史を十分知ることが重要です。それぞれの国の人々は、その国の文化、歴史、宗教などをベースに、それぞれの物事の判断基準を構成しています。我々日本人は、良く会議の席上や個人的話し合いの時に、「私の気持ちを察してください」とか、「私の考えは分かりますよね」、「善処します」といった日本的発言をすることがありますが、海外ではこの様な発言は全く通用せず、はっきりと「あなたは何が言いたいのですか」、あるいは“Yes,or,No?”といった質問が帰ってきます。まず日本の事を十分に理解し、その上で世界各国のいろいろな事を知ることです。お互いに相手の意見を、政治的、経済的、文化的視点を加味して,正確に理解し、その上で自らの意見を述べ、合意形成を得ることが、今日グローバル社会の下では重要ではないでしょうか。多様な分野の事を知り、その知識を結び付け、問題解決に向かって、有効に応用する能力が求められています。

更に言うならば、今日の日本におけるグローバル人材は、新たな発想を世界に提示しなければならないのではないでしょうか。日本は150年ほど前に世界に門戸を開き、当時の欧米の先進技術を模倣し、欧米諸国に追い付き追い越せを合言葉に、先人達は大いに頑張ってきました。その甲斐あって、30年ほど前に何とか科学力、経済力においてフロントランナーの一員になることができました。フロントランナーであるためには既存の物を模倣するだけではなく、世界に新たな発想を提示することが強く求められます。いろいろな分野の事を多く学び、それらの知識をいかに結び付けて、いかに新たな発想に繋げていくかが大切です。そのための教育システムの構築が早急に求められます。豊かな教養に裏打ちされた問題解決型の能力の育成です。新たな発想は、現状に対する問題認識を出発点とし、そこからそれぞれが修得してきた学際的、専門的知識を組み合わせ、問題を解決することによって生み出されることが多くあります。そのためのシステムが今日求められていると思います。
(政治経済学部教授)