情報技術と大学
情報基盤本部長 鎌田 弘之
本学の情報システムに関する方向性は、大きな変革期を迎えています。これまで学内にコンピュータを設置して展開していた各種情報サービスを、外部クラウドサービスに移行するとともに、その利用に適したネットワーク環境の整備が進められています。
クラウドサービスとは、学外に数多く設置されたコンピュータ群から構成されるもので、大学のような数万人に及ぶユーザからのアクセスに対応しながら、利便性を大幅に高めたシステムであり、現在、各種インターネット通販の運営や携帯端末等の情報配信サービスなどで利用されています。
本学情報システムのクラウド化は、本学のスーパーグローバル大学創成支援事業を想定したものであり、学内利用を前提にした従来システムから、学内外、国内外を問わず本学らしい情報サービスを学生、教職員に提供し、未来志向の活動を支援するシステムへ進化することが目的です。
ここで問題なのは、学内情報サービスのクラウド化は具体的にどこまで実現するか、という点です。本学は、駿河台、和泉、生田、中野に大きなキャンパスを持つ大学です。教育・研究上の要求も高度化、多様化していますが、現在の技術レベルを総合評価した時、それぞれのキャンパスに大規模サーバを保持する必要性がなくなることは当面ありません。
さらに大学も多数の個人情報を保有しており、外部への不正流出は断固阻止する必要がありますが、個人情報流出に関わる事件はご存知の通りです。クラウドサービスは、セキュリティ上、危険なのではないか、やはり学内設置システムの方が安心という方も多いでしょう。
ただクラウドサービスも日々進化しており、必ずしも負のイメージに一致しない面があります。また一般的に、システムの利便性とセキュリティは相反する関係にあると言われますが、技術者、研究者はその両立を目指して努力しています。今後、新しい技術に関する有用な情報を発信し、利用者各位の御理解、御協力を得ながら、学内の情報に関わる規定を再整備し、またリスクに対する考え方の整備等を行いながら、より有効な大学情報システムを提供していきます。
その一方、本学は2014年度、Meiji Mailをクラウド化し、学内外の区別なく、多機能なシステムが利用できるようになりましたが、皆さんは電子メールをお使いでしょうか。教職員は職務上お使いの事と思いますが、学生は、他のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の利用が大勢かと思います。SNSは、建設的に使われていれば電子メール以上に便利ですが、負の側面も大きく、様々なトラブルや、他の世界では全く通じない習慣の温床にもなっており、「個性の多様化」という肯定的な言葉では許容され得ない面も見えています。「情報技術」が未来志向から乖離しては意味がありません。SNS等の功罪を適正に評価し、本学情報システム利用者にとって、大学が大きな飛躍の場になるよう、これからも支援していきたいと考えています。
(理工学部教授)