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リバティアカデミー「コンテンツは民主化をめざす」

——総合数理・宮下教授が“表現”の可能性に言及

ユニークな語り口で持論を展開する宮下教授 幅広い世代の受講者が会場を埋めた

明治大学の生涯学習機関・リバティアカデミーは10月17日、オープン講座「コンテンツは民主化をめざす 表現のためのメディア技術」(後援:中野区、J:COM中野/協力:明治大学出版会)を中野キャンパス5階ホールで開催した。会場には、高校生からシニア世代まで幅広い年齢層の受講者約200人が詰めかけた。

講師を務めたのは、総合数理学部先端メディアサイエンス学科の宮下芳明教授。「人間の表現能力のコンピューターによる拡張」を研究対象とし、学内外で広く活躍している。

宮下教授は冒頭、「最新のスマートフォンの計算速度は、私が生まれた1976年頃の最新式コンピューターマシーンの2万倍になっている」と、日々技術が進歩している現状を自らの研究成果とともに紹介。今後も、スマートウォッチに代表されるウェアラブル技術や、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が進み、新しい産業が創出され、我々の生活にも変化が予想されることから、「知識として知っているだけでなく、最新の技術を見て、触って実感することが大事。帰りにぜひ、家電量販店に行って」と、ユーモアを交え呼びかけた。

本題である「コンテンツは民主化をめざす」をめぐっては、本来、表現せずにはいられない人間が、音楽家・作家などのいわゆる“表現する人”と、それを“享 受する人”との関係に分かれてしまった過程を紹介。それがメディア技術の発達やインターネット普及により、多くのプロではない人々による表現(=コンテン ツ制作)が進み、「“受動的消費者”が“創造的生活者”へ変化した」との持論を展開した。

その結果、テレビ局しかできなかった映像配信を「YouTube」が担い、プロの料理人の味が「クックパッド」によって再現できるなど、インターネット上に情報が集まることで、人々を幸せにするコンテンツが共有化されるといった事例が紹介された。

話題の3Dプリンターについても、「これまでに容易に作ることができなかったものが子供でも作れるようになり、企業が独占していた製造・物流が一般の人々 の手に渡ることによって、モノづくりの世界が変化していく」と解説。その上で、知財・品質管理や危険物製造に関する法整備と個人のリテラシーの重要性につ いて、「表現の民主化の先に、“責任の民主化”が求められる」と語った。

最後は、未来を見据えた本音トークも飛び出し、「表現を通して新しい社会をみんなでつくっていきたい」と締めくくった。