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明治大学における校友の役割

校友会長 向殿 政男

校友の皆さま、そして明治大学関係の皆さま方、明けましておめでとうございます。今年が皆さまにとって、良い年でありますことをお祈りいたします。

さて、多くの校友は既にご存知の通り、“校友”という言葉は、明治大学が初めて使い出したといわれています。他大学では、同窓や学友という言葉を用いている場合が多く、卒業生同士のつながりや親睦に重点が置かれています。明治大学が創案した校友という言葉には、特別の意味があります。母校は、創立直後から経済問題も含めて幾多の困難に遭遇しました。当初から、卒業生と一緒に大学を創り上げていくという以外に方法はなく、創立翌年の1882年、校則に校友という言葉を定め、卒業生は大学を支援し、共に維持していくものであるという精神をこの言葉に籠めたのです。校友会の会則にも、「大学を賛助し、会員相互の親睦を図ることを目的とする」と記されているのは同じことを意味しています。創立以来、母校が多くの困難に遭遇するたび、この精神は間違いなく発揮されてきました。本学が現在まで持続的に発展してきたのは、先人達の努力と汗の結晶であり、そこには延々と続く校友という言葉に籠められた明治魂を見ることが出来ます。

全世界で活躍する校友は、纏まって母校の発展を支援するという役割と共に、時には、母校の状況が社会から見ておかしいと感じるとき、例えば、馴れ合いになって改革が止まり時代に取り残されている、また、大学内の内向きの論理に陥って母校が開かれていないような状況のとき、校友は、広く社会の視点から大学に対して苦言を呈する必要があります。これは、明治大学における校友会の果たすべき重要な役割の一つだと考えます。

今回、本学において、法科大学院の元教員が司法試験問題を学生に漏洩するという不祥事が起きました。明治大学の歴史の中で、最も大きな不祥事の一つであることに間違いありません。本学としてはそこに至った組織的および人間的な背景を明らかにし、それに基づいた再発防止策を明確にしなければなりません。そして社会に対して、納得できる目に見える形で責任の取り方を明らかにしない限り、今後、社会は明治大学を一流の大学と見なさなくなります。このことを校友会長として学長、理事長に強く申し上げました。これも、校友という社会の眼を通して大学の在りかたを進言するという校友会の役割であると信じるからです。

今回の不祥事をきっかけに、毅然たる態度で臨み、謝るべきは謝り、正すべきは正して、情報を開示し、正々堂々と前向きに対応すれば、社会は、本学を見直し、信頼を勝ち得ることにつながると信じます。しっかりと体制を見直して再発防止策を講じ、再出発の意気込みが見られれば、校友は全面的に支援し、母校のために尽力します。