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本棚「アジアからの戦略的思考と新地政学」藤江 昌嗣・杉山 光信 編著(芙蓉書房出版、 3,500円+税)



本書は、アジアを地政学すなわち「国家を空間的な存在、地理的な有機体として考察する」視点から再検討し、「アジアからの戦略的思考と新地政学」の構築を目指した意欲的な共同研究書である。 第1部(理論編)では、諸説の検証をふまえた長期的な戦略的思考の必要性(藤江昌嗣)、長期的かつグローバルな文明論によるアジアの位置づけ(平山朝治)、地政学上の転換の基軸となるアジア(川口満)、などが論じられている。第2部(事例編)では、琉球王国による諸物産の貿易戦略(金城誠栄)、シンガポールの国家リスク管理の歴史とその先進性(東長邦明)、ダージリンのマカイバリ茶園の経営戦略(石井道子)、世界の原子力発電の市場と産業(郭思宜)、アメリカによるフィリピン独立付与と移民の歴史的関係とその後の展開(John Lambino)、東南アジア諸国の歴史をふまえた今後のグローバル戦略(杉山光信)、などについて論じられている。研究者や実務家にとって、学ぶべき視点や事例が豊富な一書である。ぜひ、ご一読をお薦めしたい。

佐々木聡・経営学部教授(編著者は経営学部教授、元文学部教授)