Go Forward

本棚「日本商法・保険学のパイオニア 志田鉀太郎の生涯」志田 俊郎 著(文芸社、1,700円+税)



本書は、本学第五代総長で、商学部第二代学部長であった志田鉀太郎先生の生涯を描いたものである。志田先生は、東京商科大学教授在職中から、明治法律学校の講師として本学の教育に関わっていたが、その後、安田保善社の役員でありながら、東京商科大学の他の先生方とともに商学部創設に尽力されている。安田保善社退職後、本学教授となり、保険の実務と理論を結びつけ、我が国の保険学の先駆者として活躍される。総長としては、留学生教育、学生の福祉向上などに積極的に関わり、開設した学生食堂を「師弟食堂」と名付け、医学部を含む理系学部の設置を構想されたのである。しかし、志田先生が総長であった時代は、戦時下である。学内で軍事教練が行われ、大学には将校が配属されていた。志田先生が学内で「学園は兵営にあらず」として、大学は大学であり、学生は学生であると発言をしたことが文部省に知られ、本学への影響を考慮し、自ら総長を辞している。志田先生の生涯は、今日の私たちにも大きな示唆を与えてくれる。

出見世信之・商学部教授(著者は志田鉀太郎の孫)