Go Forward

祝辞「失敗を恐れずに、前へ」理事長 日髙 憲三

やわらかな春風が吹き、天も地も躍動を感じさせるこの佳き日。卒業生の皆さんの門出を心からお祝い申し上げます。また、卒業式を迎えることを楽しみにされていたご家族の皆様、成長した卒業生の晴れ姿に感慨もひとしおと存じます。誠におめでとうございます。

卒業式に出席するにあたり、皆さんが過ごした学生生活を今一度振り返ると、どのような出来事が思い出されるでしょうか。キャンパスライフへの期待に胸ふくらませた入学式。生涯の友との出会い。海外留学やインターンシップ。一字一句にこだわって書き上げた論文。仮説を検証するために繰り返した実験。自分と向き合い、将来を考え抜いた末に決断した進路選択。クラブ、サークル、ボランティアなどの課外活動。皆さんは、「権利自由、独立自治」の建学の精神の下、駿河台、和泉、生田、そして中野の各キャンパスで、一日、一日成長をしてきました。この学生生活の経験が、皆さんの「個」、すなわち、責任感、情熱、積極性、使命感、知恵及びリーダーシップといった個性を磨き、今、ここ日本武道館にいる、卒業生一人ひとりを形成する力となったのです。師に学び、仲間と切磋琢磨した日々は、必ずや生涯の財産となることでしょう。

さて、皆さんがこれから生きていく社会は、常に変化を続けています。とりわけ現代は、グローバルという言葉で示されるように、変化のスピードがますます速くなっており、既存の価値観や常識が、激しく変化していく時代です。皆さんの人生には、過去の体験からは、想像もつかない試練や困難が待ち受けていることでしょう。先行きが不透明な時代、不安や心配を抱いているかもしれません。そんなときは、まず目の前の課題に真摯に向き合ってください。そして、一歩、行動に踏み出してください。

歴史に名を残す先人たちは、物事を成し遂げたときに、リスクを抱えて、最初の一歩を踏み出しました。世界の発明王、トーマス・エジソンは自身を振り返り、「私は失敗したことがない。ただ、うまく行かない一万通りの方法を見つけただけだ。」との考えを示されたそうです。私は、一度や二度の失敗にもへこたれず、強い意志を持って、継続して物事に取り組むからこそ、成功へのプロセスが開けてくると信じています。皆さんは、学生生活で、幾度となく挫折を経験し、試練を乗り越えてきました。全力で困難に立ち向かい、必死に努力した日々が、皆さんを逞しく成長させたのです。物事が思い通りにいかず、つらいときでも、自分の考え一つ、行動一つで未来を変えていくことはできます。挑戦を諦めず、失敗を恐れず、明日からも、強い信念と勇気をもって、前へ、と踏み出してください。そして、未来へ、と時代を切り拓いてください。

最後に、本学創立者の一人、岸本辰雄先生は卒業生に向けて「社会に出た卒業生の行動一つ一つが、明治大学の評価に影響する」と話されています。卒業生の活躍は大学の評価となり、皆さんは、卒業後も母校とともにあるのです。明日から歩む道は、一人ひとり異なりますが、母校の誇りを胸に、社会のため、他人のためにたくさんの汗をかいてください。これからの社会を担う明治大学卒業生の活躍を期待しています。

皆さんの進路に幸多きこと、そして、皆さんの強い「個」が、世界で輝き続けることを、心から祈念して、お祝いの言葉といたします。